2025年 第4回定例会一般質問
2025年12月2日
日本共産党練馬区議団
小松 あゆみ
日本共産党練馬区議団を代表して一般質問を行います。
初めに、区長の基本姿勢についてお聞きします。
前川区長は、これまでの区政運営を振り返り、福祉・医療サービスの充実を評価し、今後は文化・スポーツ・みどりなどの施策と組み合わせ、区民生活をより豊かにする取り組みを進めると述べています。
私たちも、この間の前進面は評価してきましたが、区政運営における区長の基本姿勢については、区長主導のトップダウンであり、「区民参加と協働」をうたいつつも住民参加は限定的で、住民自治が軽視されていると考えます。
区は住民自治をどのように捉え、住民自治の観点から、現在の区の施策の進め方をどのように評価していますか。2点、区の見解を伺います。
住民自治を発展させるためには、行政が持つ正確な情報を住民と共有すること、そのうえで住民と行政とが対話を通して課題解決の道を模索していくことが不可欠です。しかし、この間の練馬区政において、それが十分に行われているか疑問です。
1つは、計画や事業の立案過程と区民への情報提供です。大江戸線延伸は区民全体に関係する重要事業にも関わらず、基金目標額も不明で東京都との負担協議の内容も示されず、区は説明責任を果たさないまま進めようとしています。美術館・貫井図書館の再整備は、当初は大規模改修だった計画が住民に非公開の庁内検討会を経て提言になかったにも関わらず、突然建て替えに変わりました。
2つは、合意形成です。特に、豊渓中・光が丘第八小の統廃合の進め方は異常というほかありません。計画を策定するために教育委員会から諮問された適正規模・適正配置検討委員会の委員の半数は、教育委員会の職員で構成され、他の委員にも地元住民やPTA、避難拠点運営連絡会のメンバーを一切入れていません。これは計画策定の理解と納得を得ることを求めている国の手引きにも反するやり方で、住民自治を破壊する行為ではありませんか。いかがですか。
住民は、これに反発し、区議会に見直し等を求める陳情を2,000筆以上集め提出、パブコメでも見直しを求める意見が半数以上を占めましたが、区は「意見を聴いた」という形式に留まり、こうした声を無視して計画を決定してしまいました。同様のことが大二中を道路で分断する計画や稲荷山公園整備、美術館・図書館再整備でも起こっています。一体、誰のための行政なのでしょうか。
世田谷区では、道路計画やまちづくりに関して、徹底した情報公開、住民合意を重視し、賛成・反対に関わらず住民とともに考える姿勢を掲げ、実践しています。まちづくり協議会は、練馬区のように参加者を限定して希望する区民全員が参加できない方式ではなく、誰でも参加できる仕組みになっています。住民とともに計画を練り上げていこうとする区の姿勢によって、当初は反対していた人からも信頼が得られ、理解や納得に繋がっています。
杉並区では、区民と客観的に議論をしていくために、いま区が出せる情報は公表するとして、区内の都市計画道路を整備した場合の効果について、区HPに掲載しています。練馬区では、都市計画道路整備の必要性の検証や優先整備路線の選定方法について、検討中としているのに対し、杉並では区独自の指標に基づいて検証し、路線ごとに評価したものをまとめているのです。
以前は練馬区でも「区長とともに練馬の未来を語る会」で広く意見を聴く場を設けていましたが、現在は誰もが参加できる形式とはなっていません。パブコメや区長への手紙など仕組みはあっても、それが政策や予算にどれだけ反映されているかは見えにくい状況です。
行政と住民の対話を活発にするため、以前の「未来を語る会」のように広く区民が参加できる形で開催すること、まちづくり協議会は希望する区民も参加できる仕組みを取り入れて運営すること、そして計画策定の過程も立案から素案公表まで区民に広く公開することが重要です。以上3点、お答えください。
住民に関わることは、住民自身が話し合って決めることが基本であり、行政はそのための時間と場を整える役割があります。時間は掛かっても、こうした進め方は区民との信頼関係を築き、事業の円滑な推進に繋がります。住民主体の自治が実現される区政に転換することを求めます。
【前川燿男区長】 お答えいたします。住民自治についてです。
小松議員から、民主主義の根幹に関わるご質問を頂きました。私も正面からお答えします。
少年の日、私は、民意を最大限反映するには直接民主主義の徹底が理想であると考えていました。しかしその後、社会経験を積み重ねながら、よく思考実験をしました。あらゆる政策について住民全員が投票し、多数を得た政策を実施する社会があったとしたら、どのような結末を迎えるでしょうか。公の場で議論が行われない人気投票の結果は想像ができます。まさにポピュリズムそのものであろうと思います。
選挙で選ばれた首長と議員が、それぞれ見識を持ち、議会の場で行政当局を交えて議論を尽くし、政策の方向性を導き出していく。このプロセスこそが極めて重要であり、民主主義そのものであると考えるに至りました。間接民主主義を基本としながら、直接民主主義はこれを補充するものであるべきと確信しています。
無論、直接民主主義の存在そのものを否定しているわけではありません。「ねりま羽ばたく若者応援プロジェクト」や「困難な問題を抱える女性への支援」は、住民の皆さんとの直接的な意見交換から生まれた成果ですが、区議会での議論や審議を経て実行に至っています。
これまで何度もご説明してきましたが、議会制民主主義のもとで、何が区民全体の利益かを判断するのは、区民の代表である区議会と区長の責任です。それを前提に、政策形成から実行段階まで、区民参加と協働の区政を実現することが必要と考えています。
小松議員は、議会制民主主義ではなく、直接民主主義を求めているのでしょうか。議会制民主主義は、永い歴史をかけて人類が生み出した叡智なのです。
私は区長に就任して、都政に従事していた頃とは違った、大きな感銘を受けました。一人一人の区民の皆さんの顔が見え、区民の皆さんの声が聞こえるのです。住民自治とはこういうものかと改めて実感しました。そこで、政策の錬磨に加えて、住民自治と協働を私の区政のテーマとしてきました。
コロナ禍の期間を除いて、毎日のように区内の様々な現場に伺い、多くの区民の皆さんと意見交換を重ねてきました。未来を語る会だけでも116回を数えています。
日々寄せられる区長への手紙には全て目を通し、回答もすべて確認し、私自身が直接返信を書くこともあります。
事業を進める際には、区民や関係団体の皆様から様々な意見・要望を伺い、その上で区民の代表である区議会の皆様にお諮りし、区政を前に進めているのです。この組み合わせこそが現代社会が求める自治であり、住民自治そのものであると確信しています。
私からは以上です。そのほかの質問につきましては、教育長および関係部長から答弁いたします。
【三浦教育長】 私から、教育についてお答えします。
はじめに、学校の適正配置についてです。
「区立学校適正配置 第二次実施計画」は、令和5年度に策定した基本方針に基づき策定したものです。基本方針は素案の段階で区民の皆様に広く周知し、ご意見を伺ったうえで、住民の代表である議会に説明して成案としたものです。
実施計画の策定に当たっても、令和6年12月に素案をお示しし、学校での全体説明会や、保護者からの要望を踏まえた個別説明会、オープンハウスなどを開催したほか、反対意見を寄せている方々に様々な機会でお話を伺い、丁寧な説明を行ってきました。その上で、取り入れられるご意見は計画に反映しました。計画に反対の趣旨の陳情については、区議会で不採択のご判断をいただきました。
区民の声を無視して決定したものではありません。
【佐古田企画部長】 私から、区政の進め方についてお答えします。
区は、各事業を進めるなかで、区民や関係団体の皆様から様々な意見・要望を伺っています。加えて、施策や計画の検討段階では、区民意識意向調査やアンケート、審議会や懇談会など様々な手法を用いて、幅広く意見をお聞きし、その内容を公開しています。
こうした検討経過を経て素案を公表した際には、オープンハウスや説明会、パブリックコメントなどにより丁寧に説明し、ご意見を伺い、その上で、区民の代表である区議会の皆様にお諮りし、区政を前に進めているものです。
多くの方に参加いただく大規模な集会は、参加者お一人ずつの発言時間が限られ、議論を深めることが難しい面があります。
今後も、様々な手法を工夫しながら、区民参加と協働の区政を進めてまいります。私からは以上です。
【中沢都市整備部長】 私から、まちづくりの進め方についてお答えします。
まちづくり計画の策定やその具体化に当たっては、地域の皆様の御意見や御要望を丁寧に伺いながら進めることが不可欠です。
区は、平成十七年に制定したまちづくり条例により、多様な主体の協働によるまちづくりを目指し、区民等が積極的に参画する機会を設ける仕組みを定めています。区は、本条例の趣旨に則り、まちづくりを進めています。
各地区で設置しているまちづくり協議会等は、計画検討に積極的に関わってくださる方の参加が肝要であり、公募のほか、町会・商店会など、地域で活動する様々な方が参加しています。
また、協議会等での検討に加え、ワークショップやオープンハウス、ウェブアンケート、更に区報やまちづくりニュースの配布、イベントでの出店ブース、必要に応じての個別訪問など、様々な方法を活用して、計画の策定段階から広く情報を提供し、関係する区民の誰もが、まちづくりに参加できるよう工夫しています。
こうした取組により、当初、異を唱えていた方も含め、多くの方々の賛同・協力を得て実現してきています。
今後とも地域の皆様と対話を重ねて、まちづくりを進めていきます。私からは以上です。
次に多文化共生についてお聞きします。
練馬区内に在住する外国人住民の数は増え続けており、2021年4月1日時点で19,641人、2.65%だったものが、2025年4月1日では27,084人、3.62%となっています。
昨年策定されたビジョンのなかで、区は外国人に開かれた地域づくりを掲げ、新たな方針の策定や日本語学習の場を充実していくとしていますが、具体的にどのような対応をしようとしているのでしょうか。お答えください。
私たちが考える対策の一つは、情報を分かりやすく伝える取り組みを強化することです。
区内の外国人住民は多い順に、中国、韓国、ベトナム、ネパールとなっています。区は外国人向け相談窓口で英語・中国語・韓国語・タガログ語に対応していますが、ベトナム語など、より多くの言語への対応が必要です。そのためにも、多言語対応の拡充と合わせて、やさしい日本語の普及を進めることが重要です。
しかし、こうした対応は、あくまで各部署任せになっていて、全体としてどう徹底させていくかといった視点が弱いと感じます。
この間実施された外国人アンケートの中では、知りたい情報として上位にあるのは、災害、医療、税や社会保険、イベント、住宅情報となっており、少なくともこうした分野に関連する部署では、統一した方針を策定し、対応を徹底すべきと考えますが、いかがですか。
また外国人相談窓口については地域振興課が担当している関係で、本庁舎9階に設置されていますが、1階など、より相談しやすい環境にするべきです。お答えください。
二つは、外国人をまちづくりのパートナーとして位置づけ、共に取り組む姿勢が必要だということです。
例えば、ごみの分別などの取組を定着させるためには、一方的にルールを強調するよりも、同じ立場の外国人から働き掛けてもらったり、当事者から意見を聴く方がより効果的です。
埼玉県蕨市では、市職員が急増するベトナム人向けの案内を作成する際に、日本語学校を訪問し、協力を要請したといいます。練馬でもこうした事例を参考にすべきではないでしょうか。いかがですか。
三つは、外国人児童・生徒の日本語をはじめとした指導体制の強化です。
この間、光が丘春の風小学校で、専任の教員が配置され、日本語教室が行われています。しかし、専任の教員は一人のため、教材研究や授業について、複数の教員で検討することができず、より負担が重くなっています。さらにその教員が異動してしまえば、新たな教員が一から構築しなければならず、継続性という面で問題です。
こうした状況を改善するためにも複数の教員で運営する日本語学級が必要です。専任教員による日本語教室を増やすことと合わせ、日本語学級を設置していただきたい。いかがですか。
同時に、基本的な日本語が身についていないので教科学習まで手が回らないため、教員からは、就学前の段階で日常生活に必要な最低限の日本語を集中的に学べる仕組みを整えて欲しいとの要望が出されています。
群馬県太田市では、対象が日本の小中学校に入学する子どもたちに限定されているものの、40日間、平日3時間を使って、プレクラスを実施しています。
そこでは、日本語はもちろん、あいさつ、日直、清掃、連絡帳、保護者へのオリエンテーションまで行い、バイリンガル教員6人、日本語指導員23人を配置しているといいます。区としても生活に必要な最低限の日本語や慣習を集中的に学ぶことができる仕組みをつくるべきです。お答えください。
四つに、仮放免などの在留資格がない外国人への支援についてです。
仮放免になると移動も就労も健康保険の加入も、生活保護の受給さえも認められず、著しい生活困窮に陥ります。これに対して、埼玉県議会では「仮放免制度の改正を求める意見書」を、埼玉県川口市でも二度目となる仮放免者に関する要望書を提出しました。
区としても仮放免者に対する非人道的な政策を転換するために国に意見を上げるべきではありませんか、お答えください。
また仮放免中の外国人、あるいはそうした人たちを支援している団体に対して区として何らかの支援を行うことが必要ではないでしょうか。いかがですか。
【三浦教育長】次に、日本語指導についてです。
今年度から、日本語指導が必要な児童が多い小学校1校に日本語指導教員を配置し、日本語学級の開設に向けて準備を進めています。今後、中学校の日本語学級設置についても検討します。
また、日本語指導が必要な児童生徒がいる学校に日本語指導講師を派遣し、日常生活を支障なく送れるよう、平仮名や片仮名、挨拶など、基本的な日本語から指導しています。
今年度、中学生への講師の派遣時間の上限を年160時間まで拡充するなど、支援の充実に取り組んでいます。
【大木地域文化部長】 私から、外国人施策についてお答えします。
区は、外国人が地域で安心して生活できるよう、日本語学習の支援や多言語での情報発信、外国語相談窓口の開設など、生活における様々な相談や支援を行っています。
コミュニケーション支援として日本語学習の場を充実させ、令和6年度には、初級日本語講座の定員を60名から90名に拡充しました。
日本語教室のボランティア養成講座の定員も増員し、指導者の育成を図るとともに、こども日本語教室の指導体制を強化しています。区ホームページや生活に密着する情報等の多言語化を進めるほか、やさしい日本語の活用に向け、区民や区職員への研修を実施しており、外国人向けのホームページや転入者向けチラシ等に活用しています。
外国語相談窓口では、日常生活における様々な相談に応じており、本庁舎1階での転入手続きの際にも相談窓口を案内しています。
対面での相談に加え、相談員が各部署の窓口に出向くなど、柔軟に対応するとともに、各部署の窓口では、必要に応じて多言語翻訳機を活用しています。
庁内連絡会を通じて、こうした対応状況を確認しながら情報共有しています。引き続き、相談しやすい環境の整備と周知に努めてまいります。
また、外国人を交えた連絡会を定期的に開催するとともに、アンケートや個別ヒアリングを通じて、施策に対するご意見を伺いながら、取り組みを進めています。
今年10月に発足した新内閣は、外国人政策に関する基本方針を「受け入れ拡大」から「秩序ある共生社会の実現」へと転換し、これまでの外国人政策を大幅に見直す方針を示しています。こうした国の方針や政策の方向性を十分に見極める必要があることから、今年度予定していた区の新たな方針の策定は、来年度以降に延期する予定です。
外国人の在留視覚の付与や出入国管理は、法に基づいて国が行うものであり、仮放免の方々への対応は、基本的に国の責任において実施すべきものです。区として、独自の支援や国への働きかけを行う考えはありません。私からは以上です。
次に、医療と介護の問題についてお聞きします。
医療の現場では、診療報酬の引き下げにより、かつてない赤字が広がっています。都立病院機構の2024年度決算は、当期損益がマイナス239億円。病院全体の医業収益を上回る人件費と物価高が経営を直撃し、すべての病院が赤字に転落しました。全国調査でも、2025年6月時点で経常赤字病院の割合は63.6%、医療機関の倒産は過去20年で最多水準です。
採算性の低い救急・小児・産科・精神科では、診療制限や受け入れ停止が増えており、医療の「公共性」が脅かされる事態が広がっています。それにもかかわらず、国の方針は「自助・共助の強化」として病床再編や在宅へのシフトを進めようとしています。
しかし、地域医療を担う中小病院や診療所の経営基盤が崩れれば、在宅医療や介護への移行も成り立ちません。いま必要なのは、給付削減ではなく、支える構造を再構築することではないでしょうか。
介護保険を見ても、国の社会保障審議会・介護保険部会では、要介護1・2の訪問介護・通所介護を介護保険から外し、市区町村の総合事業に移す「保険外し」が、今年の秋から本格的に議論されています。
さらに、ケアマネジャーのケアプラン有料化、2割・3割負担の拡大、高額介護サービス費の上限見直し、施設多床室の室料負担など、複数の負担増が同時に検討されています。
いずれも「現役世代の保険料負担を抑える」ことを理由に掲げていますが、その実態は、支援を必要とする高齢者や家族に犠牲を押しつけるものです。
介護の現場では、すでに人手不足が慢性化しています。この状況で、要介護1・2を総合事業に移行すれば、報酬単価の低下、基準緩和、ボランティア代替などによるサービスの質の低下と事業所の撤退が加速しかねません。
結果として、区民は必要な支援を受けられず、重度化・入院・介護離職が増えることになり、国が狙う“給付削減”は、むしろ社会全体のコスト増を招く矛盾をはらんでいるのではないでしょうか。
医療と介護は、別々の制度ではありますが、一体に考えるべき生活基盤です。病院の在院日数短縮を進めるなら、その先にある在宅・通所・訪問の受け皿が欠かせません。医療が赤字で縮小し、介護が給付削減でやせ細れば、支え合いの連携は断ち切られてしまうことになるのではないでしょうか。
こうした構造的な危機を踏まえ、以下3点についてお聞きします。
第一に、区内の医療機関が救急・小児・産科・精神・回復期・在宅など地域に必要な医療機能を維持できているか調査し、重点機能を特定した上で、エネルギー・人件費高騰への支援や病診連携強化など、区独自の医療体制支援策を整備することが求められます。
国は診療報酬を引き上げるべきですが逆行しており、東京都の支援も不十分なため、区独自の対応が必要と考えますが、いかがですか。
第二に、介護保険制度改変の影響について、要介護1・2の人数や利用者数、サービス種別費用などを基に、総合事業への移行が区財政や人材確保、利用者負担に与える影響を試算し公表することが求められます。
特に、ケアプラン有料化による利用控え率や重度化による医療・介護費の増加を推計し、国に対して改変によるコストを明示することで、国が負担を減らし自治体に責任を押し付けようとしている実態を示すべきです。いかがですか。
第三に、区として国・都に対し、「要介護1・2の給付維持」「ケアプラン無料の継続」「2割・3割負担拡大の中止」「多床室の室料負担への減免確保」を求める意見書を提出するとともに、制度改変に備えて区独自の減免制度や臨時支援予算を設け、低所得高齢者・単身世帯・多利用世帯を支援する具体策を検討・実施すべきです。
医療・介護の赤字や削減、負担増の危機に対し、練馬区が区民の命と暮らしを守るため、現状を数字で示し、具体的な支援策を提示するとともに、国に毅然と意見を表明することが強く求められます。
【枝村高齢施策担当部長】私から、介護保険についてお答えします。
高齢化が進展する中で、給付と負担のバランスを図りつつ、制度の持続可能性を確保するため、現在、社会保障審議会介護保険部会において、様々な検討が行われています。要介護1・2の方の生活援助サービスの総合事業への移行やケアプラン作成に係る利用者負担もその一つです。
制度の改正にあたっては、国が広域的な視点から制度を設計し、改正による影響額を考慮のうえ、運営基準や負担割合などを定めます。今後の介護保険部会で詳細な検討が行われることが見込まれており、区で独自に試算を行う考えはありません。
区は、全国市長会を通じて、検討にあたっては課題や影響を十分に調査・分析し、利用者や自治体等の意見を踏まえたうえで、慎重に検討することを、すでに国へ要望しています。区独自に減免制度などを設ける考えはありません。
引続き国の動きを注視し、現在、検討を進めている第10期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画のなかで、円滑に介護サービスが提供できるよう検討してまいります。私からは以上です。
【冨田地域医療担当部長】 私から、医療機関に対する支援について、お答えします。
都は、物価高騰や人件費の上昇を踏まえ、今年度、民間病院等への緊急的な支援を実施しています。本年末までとされていた食材費や光熱費の補助については、令和8年度6月まで延長することが示されました。
さらに、都は大都市特有の医療機関への影響等を考慮し、診療報酬の大幅な引き上げや改定前の財政支援を国に緊急提言しています。
国においても、令和8年度診療報酬改定に向け、物価や賃金、人手不足等の環境の変化を適切に反映し、医療機関の経営の安定につながるよう検討が進められています。
加えて、先月閣議決定された総合経済対策では、診療報酬改定を待たず、前倒しで経営や処遇の改善支援を行うこととしています。
区内医療機関からは厳しい経営状況が続いていると伺っています。引き続き、国や都の動向を注視していきます。私からは以上です。
次に、教員の働き方についてお聞きします。
学校現場では教員の長時間労働が依然として深刻です。その大きな要因が、公立学校の教員には「教職調整額」を支給する代わりに残業代を支給しないとした公立教員給与特別措置法、いわゆる給特法の存在です。
残業代制度は、本来、割増賃金を義務付けることで使用者にコスト意識を促し、長時間労働を抑える世界共通の仕組みです。
しかし給特法により残業代が不要とされた結果、教員の業務は増やされ続け、週当たりの残業時間は小学校で、1966年の「月1時間20分」から2022年には「月20時間34分」へ、中学校では「月2時間34分」から「月25時間14分」へ大幅に増加し、社会問題化してきました。
こうしたなか、今年6月に給特法が改定されましたが、膨大な時間外労働を労働基準法上の労働時間と認めない枠組みは維持され、残業代不支給の制度を固定化する内容となっています。
政府は教職調整額を4%から2030年度までに10%へ引き上げるとしていますが、他手当の削減とセットであり、初年度の増額は月1,500円程度、10%に引き上げられても月1万円前後に留まります。物価高騰下の民間賃上げ水準にも及ばず、長時間労働の抑制には繋がりません。
東京大学の本田由紀教授も国会で「労働に関する明確な法規範を逸脱する法律を大量の教員に適用することは恥であり罪である」と強く指摘しています。
給特法が残業代不支給の枠組みを維持していることが、教員の長時間労働を解消できない根本要因だとの認識が区にあるか伺います。また、働き方改革を進めるため、給特法の廃止を国に求めるべきです。2点お答えください。
練馬区では2019年3月に「教員の働き方改革推進プラン」を策定し、スクール・サポート・スタッフ等の拡充、出退勤管理システム導入、土曜授業見直しなどを進めてきました。その結果、令和5年度の月ごとの時間外在校時間は、小学校で12か月中10か月、中学校で11か月と、前年度より減少しました。
しかし依然として多くの教員が月45時間を超えており、区もプラン改定にあたり「月45時間以内、年間360時間以内」の時間外在校時間を全教員の目標としています。一方、給特法は本来超勤を原則禁止しているにも関わらず、「月45時間以内」の残業を容認する現在の制度は矛盾しています。
また現状で月45時間以内を達成している教員が5割未満の月も多く、年間360時間以内の教員は、33.4%に留まっています。この状況を根本的に改善するには教員数の増員が不可欠です。
1958年の義務標準法制定時、国は教員の労働時間が1日8時間に収まるよう授業持ち時間を「1日4コマ」とし、それに見合う教員定数を配置していました。
しかし現在は教員不足で「1日5~6コマ」が常態化しています。改定給特法の付則3条でも「教員1人当たりの授業時数削減」が明記されています。
教員の授業負担を「1日4コマ以下」に抑えるため、国へ教員定数の増加を求めるべきです。区の見解を伺います。
東京都は令和10年度までに、12学級以上の小学校高学年での教科担任制実施を進めています。
世田谷区では都に先行し、区独自の人員配置で今年度から教科担任制を導入し、小規模校でも実施できるようにするとともに、欠員対応や若手育成のため「学校経営支援教員」を配置しています。
杉並区では1年生から3年生のいずれかの学年の担任業務を補佐する「エデュケーション・アシスタント」を全校に1名配置し、授業の質向上と負担軽減を図っています。
練馬区もこうした自治体を参考に、独自に教員等を配置し、教員の負担軽減をさらに進めるべきです。区の考えを伺います。
【三浦教育長】次に、教員の働き方改革についてです。
今回の公立教員給与特別措置法の改正の基となった中央教育審議会答申には、「教員の業務について、自主的で自律的な判断に基づく業務と、校長等の管理職の指揮命令に基づく業務が日常的に混然一体となって行われており、これを正確に分けるのは極めて困難である」、「授業準備や教材研究等の教師の業務が、どこまでが職務で、どこからが職務ではないのかを精緻に切り分けて考えることは困難である」ことなどが記載されています。
国において、こうした教員の職務と勤務態様の特殊性を考慮し、現行の教職調整額の枠組みが維持されたと認識しています。
区として、教員の長時間労働を解消できない根本要因であるとの認識はなく、廃止を求める考えもありません。
教員の定数については義務教育標準法に基づき国が決定していますが、教員の負担軽減を図るために、教員一人の週あたりの担当授業時数引き下げや教員の増員など、特別区教育長会を通じて既に国や都に要望しています。
区では、全校にスクール・サポート・スタッフや学校生活支援員を複数名配置し、エデュケーションアシスタントも31校に35名配置しています。
また、校長経験者である13名の教育アドバイザーが各校を巡回し、新規採用教員や若手教員の悩みを聞き、助言を行うなど教員の負担軽減に取り組んでいます。
必要な教員の確保や配置は国や都が責任をもって行うべきと考えます。私からは以上です。
次に来年度から本運用が始まる「こども誰でも通園制度」についてお聞きします。
本事業は社会保険料や国民健康保険料、後期高齢者医療保険料からの徴収金を原資とする給付事業であり、保護者の就労有無に関わらず要望があれば「サービスを提供しなければならない」という建て付けになっています。
保護者の就労に関わらず、乳幼児への保育環境や社会的支援を抜本的に整備すべきだという認識が広がっていることは重要です。
しかし、誰でも通園制度の導入にあたっては、業務負担の増加を懸念する保育士の声が強く、現場との認識が十分に共有されているとはいえない状況です。
そのうえでまず、制度の課題についてです。区は試行運用で国制度に都制度を上乗せする形で基準強化していますが、9月時点で区内の空き枠66人に対して申込数は330人になっています。
年度初めには、生後6カ月以上の子どもで利用枠が独占・固定される可能性が高く、11月から3月生まれの子どもはサービスを利用できない事態が十分に考えられます。
私たちは、来年度の本格運用以降も、誰でも通園制度の供給が需要に大きく追いつかない状況になると考えています。
区は、需給予測に基づき、本当に「誰でも」利用できる制度として運用できるという見通しを持っているのか、また、もし見通しを持っているのであれば、その根拠を伺います。
そもそも、誰でも通園制度を必要とする世帯の一部には、いわゆる「隠れ待機児童」が含まれます。今年度初めに「保育所等に入れなかった子ども」が約600人いたことからも、その存在を踏まえて考える必要があります。
すでに無償化された誰でも通園制度への希望者が増えたことで、一時預かりの空き枠が減り、実際に3歳から5歳児の利用可能な場が狭まる状況も見られます。子どもの発達に特別な配慮が必要な場合、事業者が人手不足などで保育を断らざるを得ない可能性があります。
また、月齢によって補助額に差があるため、手のかからない2歳児を0・1歳児より優先して預かる傾向が強まるのではないかという懸念もあります。これらの現場の不安について、区の考えを伺います。
二つ目に、保育の社会化に伴う子育ての環境整備についてです。保育サービスには様々な施設種別と事業形態があり、それぞれ申し込みの窓口や利用要件、料金体系、契約方法が異なっています。
「保活」が保護者に求める自己責任は非常に大きく、特に余力のない家庭ほど保育サービスを必要とするにも関わらず、必要な支援にたどり着けない状況があります。孤立や不安を抱える子育て家庭が増えるなか、これまで就労していない世帯が保育士の専門性を利用できる制度は、一時保育と「ぴよぴよ」に限られていました。
しかし、誰でも通園制度の導入に示されるように、就労の有無に関わらず利用できるユニバーサルな保育制度が求められています。
今こそ、私たちが繰り返し求めてきた認可保育園の増設が最も必要とされているときではないでしょうか。合わせて、保育士の年収が全産業平均より100万円以上低い現状を踏まえると、子どもの成長・発達に直接関わる保育士の処遇改善について、あらゆる基準や手立ての強化が求められていると考えますが、2点について区の見解を伺います。
三つ目に、基準のあり方についてです。区の基準では1・2歳児の保育士配置が国基準と同様の6:1になっていますが、都内在園児の基準である5:1よりも規制緩和されている理由を伺います。
また、満3歳児以上が15:1となっていますが、2歳児が含まれるクラスである以上5:1を基準にするべきと考えます。2点についてお答えください。
試行実施している私立園では、独自加配で1歳児8人を3人で保育しているとのことです。制度だけで事業者の収支が赤字にならないよう、単価の引き上げや基礎経費を含めた十分な財政措置を国に求めるとともに、過渡期には区独自での支援も手厚く行うべきと考えます。区の見解をお聞きします。
誰でも通園制度を導入する施設の許認可は各自治体の責任ですが、試行運用では定期的な巡回指導や検査が行われていません。
保育事故は、登園初日から数日以内の乳幼児に圧倒的に多く発生していることを踏まえると、少なくとも来年度初めまでには、検査基準の制定やそのための人員配置について具体的に規定すべきです。
さらに、登録前の親子面談には、保育士や園長に加えて栄養士や看護師も同席する必要がありますが、現状ではそのための助成がありません。
他の自治体では面接手数料を徴収する施設もあることから、区としても面接にかかる1時間分の助成を実施すべきだと考えます。2点について区の見解をお聞きします。
以上で、日本共産党練馬区議団を代表しての一般質問を終わります。
【関口こども家庭部長】 私から、こども誰でも通園事業についてお答えします。
本年7月から、区独自に利用上限時間の拡大や事業者への運営費補助の拡大を行い、試行しています。
現在、私立保育所等21か所で実施しています。地域や児童の年齢によっては、希望する施設の利用ができない状況も生じています。
先月28日には、来年度に向けた事業者説明会を開催し、新たに実施意向を示す事業者もありました。引き続き、丁寧な周知・説明を行い、実施事業者の拡大に努めていきます。
区は試行にあたり、事業者からの声を踏まえ、一時預かり事業等に影響がないよう実施しやすい条件を整備してきました。
令和6年度の一時預かりの利用実績は56、425人に対し、供給量は93,333人であることから、十分な量を確保しています。
区では、支援や配慮が必要な児童の利用に努めるよう事業者へ依頼しています。また、2歳児の定員に空きがある施設も生じており、優先的に2歳児を受け入れている状況ではありません。
次に、職員の配置についてです。誰でも通園事業の配置基準は、認可保育所等と同等の基準です。配置基準は、令和7年第三回定例会において区の条例で定め、議決・制定されており、見直す考えはありません。
認可保育所において5対1に加配している場合は、国がその経費を支援しているものであり、配置基準ではありません。
なお、誰でも通園事業の実施が保育士不足の深刻化を招かないよう、国の責任において、保育士の処遇改善、保育士確保等の支援措置を行う旨、特別区長会を通じて国へ既に要望を行っています。
指導検査については、法令に従って適切な事業運営ができるように、国が今後示す留意事項を踏まえ実施していきます。事前面談は、児童を安全に受け入れるため各施設で実施するものです。
区では、事前面談に係る経費等も含めて、運営費補助の拡大を行っており、追加経費を別途補助する考えはありません。
区では、試行している全施設を訪問し、直接現場の声を伺い、円滑に事業実施できるよう相談に応じてきました。来年度からの本格実施に向け、利用者および事業者の声を踏まえ、引き続き事業の充実に向けて取り組んでまいります。
次に、子育て環境の整備についてです。
区は、前川区長就任以来、待機児童ゼロを区政の最重要課題の一つに掲げ、全国トップクラスとなる9,400人以上の認可保育所等の定員枠の拡大を実現してきました。
近年、育児休業の取得増や休業期間の長期化が進み、0歳児の保育需要が減少し、特に1・2歳児の保育需要が増加しています。一部の地域では逼迫した状況が生じていることから、昨年度取得した立野町の区有地に認可保育所を誘致します。
今後も、第3期こども・子育て支援事業計画に基づき、地域事情等を踏まえながら柔軟な定員確保を進めてまいります。
保育士等の処遇改善は、国や都のキャリアアップ補助金や職員宿舎借上げ支援事業補助金等を活用し、取り組んでいます。人員体制等については、区立認可園だけでなく私立園も含め、保育士や看護師等を国の基準に上乗せして配置し、財政的に支援しています。
引き続き、こうした取組により保育士等の処遇改善に取り組んでいきます。私からは以上です。