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議会報告
REPORT

2024年第二回定例会一般質問     のむら説(6月12日)

2024年 第2回定例会一般質問

2024年6月12日

日本共産党練馬区議団

のむら 説

 

 日本産党練馬区議団を代表して一般質問を行います。まず、初めに生活保護について聞きます。

 厚労省が発表した2023年度の「毎月勤労統計調査」では、労働者ひとり当たりの実質賃金は前年度比2.2%減少して、2年連続のマイナスでした。基本給や残業代などを合わせた現金給与の総額は微増ですが、物価上昇により実質賃金は長期のマイナスが続いています。4月発表の日銀「生活意識に関するアンケート調査」では、1年前と比べ現在の暮らしに「ゆとりがなくなってきた」と回答したのは49.5%と前回調査から多少改善されたとはいえ、依然、半数近くを占めています。               

 また、「1年後の物価」や「5年後の物価」が現在より上がるとの回答は前回調査より増えていて、今後も物価上昇が続くと受け止めている人が増えています。物価高騰のさらなる長期化が予想されるなか、区民生活は深刻な危機に直面しています。区は現在の物価高騰と区民生活への影響をどう認識しているでしょうか。お答えください。

 憲法25条生存権は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとし、その具体化が生活保護制度です。この間、練馬区の保護世帯数は令和3年度の1万3355世帯とくらべ令和5年度は1万3571世帯と微増ですが、物価上昇が続き実質賃金などが下がるなか、実際は保護を利用できる世帯はさらに多いのではないでしょうか。

 もともと制度の捕捉率が約2割とあまりに低すぎることがあり、その背景には保護基準の恣意的な引き下げ、制度への根強い忌避意識、同意のない扶養照会などがあると指摘されています。民間シンクタンクは、2022年度~24年度の3年間の物価高騰により21年度と比べた24年度の年間家計負担額は世帯当たり28万円増えるとの試算を明らかにしています。物価高が家計の重しとなる状況が長期間つづいています。

 さらに保護利用世帯では、生活扶助基準は2013年の引き下げ以来、最大で15%引き下げられてきたために苦しい生活を強いられています。国は、引き下げ理由として「デフレ調整」を挙げています。しかし、全国で行われている保護基準引き下げ違憲訴訟「いのちのとりで裁判」では、デフレ調整については専門家の意見を無視ないし著しく軽視しており、判断の過程に過誤または欠落があることが強く疑われるとして、全国で16の地裁・高裁で引き下げは違法との判決が出ています。

 合理的な根拠によらない引き下げは見直し、物価高騰の状況に見合った保護基準に引き上げるよう、国に求めるべきです。お答えください。

【佐古田企画部長】私から、物価上昇への対応についてお答えします。

 エネルギーや食料品を中心とする物価上昇が続き、区民の生活や事業者の活動に大きな影響を与えています。経済の大きな変動への対応は国が責任を持って行うべきことですが、区は、区民生活の安定を守るために、国や東京都が実施する対策を基本としながら、物価上昇の影響を緩和するための支援に取り組んでいます。

 昨年度は六度にわたり補正予算を編成し、区独自の緊急的な支援を実施しました。今年度も、低所得世帯等への支援として、国の総合経済対策に基づき、定額減税に先立って給付金の支給を行っているほか、昨年度に続きエアコン購入費の助成を実施するなど区独自の取り組みも進めています。

 こども食堂に対する臨時支援金、事業者の資金繰りを支援する緊急経営支援特別貸付に加え、今月からキャッシュレス決済ポイント還元事業も実施しています。

 引き続き、国の経済対策の動向や区内経済の状況などを注視しながら、区民生活を支える上で必要な施策を実行してまいります。私からは以上です。

 

 生活保護制度への忌避感を払拭するためには、「生活保護の申請は国民の権利」と周知し理解を広めることが必要です。 すでに練馬区では福祉事務所への相談を促すためホームページを改善し、独自にチラシ作成して区立施設で配布をしています。より多くの区民の目に触れ、制度への正しい理解を深めるために独自に作成したチラシを掲示することや、「生活保護は権利です」というポスターの作成・掲示を求めますが、考えをお聞かせください。

 この間、私たちは生活保護申請時の扶養照会について、職員の業務負担である一方で金銭援助にはほとんどつながらず、むしろ申請を躊躇させる弊害になることから廃止を求めてきました。区は「扶養照会は扶養義務者の扶養が保護に優先するという法の明確な規定がある」とし、こうした規定や通知にしたがった対応を基本としてきました。しかし、法の規定は仕送りなどがあった際に収入認定を行い、その分の保護費を減らすという位置づけにすぎません。

 厚労省は令和3年3月に通知を出し、要保護者が扶養照会を拒む場合には、「扶養義務履行ができない場合」にあたる事情が無いかをとりわけ丁寧に聞き取る運用を求め、扶養照会は「扶養義務の履行が期待できる」と判断されるものに対して行うものとしています。

 こうした通知にのっとり、扶養照会はやめ、国に対しても廃止を求めていただきたい。2点お答えください。

【吉岡福祉部長】私から、生活保護制度、介護保険等についてお答えします。

 はじめに、生活保護基準についてです。

 平成25年度から27年度にかけて段階的に改定した生活保護基準については、改定に伴う減額処分の取り消しを求める訴訟が全国29の地方裁判所に提訴され、26地裁および4高裁での判断は分かれています。高裁判決については、いずれも最高裁で審理が続いています。国は、令和7年度以降の生活扶助基準について、今後の社会経済情勢等の動向を見極めて必要な対応を行うため、令和7年度予算の編成過程において検討する、としています。区は、国の動向を注視してまいります。

 次に、生活保護制度の周知についてです。

 区は、生活保護を必要とする方が保護を受けることができるよう、福祉事務所を中心に民生委員、地域包括支援センター等の関係機関と連携して、制度の周知や適切な案内に努めています。区ホームページでは、住まいや生活に困窮する全ての方に対し、その状況に応じ、必要な保護を行い、最低限度の生活保障と自立支援を行うという生活保護法の目的を掲載するほか、厚生労働省のホームページにリンクし、「生活保護の申請は国民の権利」であることを、既に周知しています。

 生活保護の申請窓口である福祉事務所に関するチラシを作成し、生活サポートサンター、区民事務所、図書館などで配布するほか、区公式XやLINEを通じ、広く周知しています。本年10月から、生活保護に対する理解を深め、円滑な申請につながるよう、制度に関するAIチャットボットを実施します。引き続き、様々な媒体を活用した情報発信に努めてまいります。

 次に扶養照会についてです。

 生活保護法第4条第2項において、扶養義務者の扶養は、保護に優先して行われるものと明確に規定しています。令和3年3月に発出された扶養照会に係る国の通知では、要保護者が扶養照会を拒んでいる場合には、その理由について特に丁寧に聞き取りを行うことを各自治体に求めています。10年程度音信不通である場合には、扶養義務の履行が期待できない者と判断できるなど、扶養義務者の判断基準が示されています。区は、これまでも要保護者の状況を丁寧に伺い、意向を尊重しながら扶養照会の可否を判断しています。

 引き続き、国や都の通知に基づき適切に対応してまいります。

 国に対し、扶養照会の廃止を求める考えはありません。

 

 長引く物価高騰や実質賃金減少などの影響で、フードバンクへの食料提供等は減少している一方、利用希望者は急増しています。こうした中で、行政による支援のさらなる充実が求められています。板橋区では社会福祉協議会と連携し常設型のフードパントリーが実施されています。また、長野県では寄贈食品だけでなく不足分は県が購入費を負担し、自治体の支援窓口を訪れた人への食糧支援を始めています。

 練馬区では、フードドライブで集めた物品を区内こども食堂やフードバンクに取り組むNPOなどへ提供していますが、それに加えて寄贈食品だけでなく、不足分を区が用意したうえで区としてフードパントリーを実施し、さらなる支援に踏み出すべきだと考えますが、区の見解をお答えください。

【吉岡福祉部長】次にフードドライブ事業等についてです。

 区は、フードドライブ事業で集まった食品を、生活にお困りの方の相談窓口である、生活サポートセンターで、直接提供しています。また、社会福祉協議会等と連携し、子ども食堂やフードバンクを運営する団体等へ食品を提供しています。昨年度から、物価上昇に対応するため、こども食堂やフードパントリーに対し、1食あたり100円助成する、こども食堂等臨時支援金事業を実施しています。

 生活困窮者に対し、区が担うべき役割は、食料配布などの一時的な支援にとどまらず、相談者一人ひとりの生活状況を丁寧に伺い、課題を把握し、社会福祉協議会など関係機関と連携しながら継続的な支援を行うことであると考えています。

 引き続き、各機関や地域団体と連携して、生活困窮者への支援を行っていきます。

 

 つぎに保育について聞きます。練馬区は今年度、4年連続の待機児ゼロを達成したといいますが、4月1日時点で「保育園などに入園できなかった者」は571人にのぼり、うち1、2歳児は403人になっています。入園希望者が昨年より減ったにもかかわらず保育園などに入園できなかった者が161人増となったのは深刻な保育園不足と捉えるべきです。

 反対の強い谷原保育園の閉園計画で1、2歳児クラス30人分を募集停止にした一方、これまで同様に細切れの1歳児1年保育を12園開園し、さらに初めて2歳児1年保育まで実施しています。しかも2歳児は幼稚園の空教室まで使っての対応となるなど、区はごまかし基準の待機児解消に躍起です。まず聞きたいのは区が1年細切れ保育の弊害をどう考えているかです。1歳児1年保育は2016年来、恒常化しており年間延人数にして700人を超える年度もあり、昨年度は575人でした。1年保育は緊急対策であり、父母に繰り返しの保活を強い、環境変化により子どもらへも重い負担となります。

 これらの問題は、区が就学するまで一貫して通える認可保育園を十分に増やしてこなかったことによるものではないでしょうか。さらに、1年保育の利用期間をサンプル調査したところ半年以上~12カ月も在籍する子どもたちが多数いたことにも驚きました。

 こういう子どもたちを待機児童としてカウントするのは当然であり、あらためて実態に見合った施設整備を求めます。2点の答弁をお願いします。 

【堀教育長】私から、保育に関するご質問にお答えします。

 前川区長就任以来、待機児童ゼロを区政の最重要課題の一つに掲げ、全国トップクラスとなる9,200人以上の定員枠の拡大を実現し、本年4月、4年連続で待機児童ゼロを達成しました。1歳児および2歳児の1年保育事業を利用している方には、保育園の空き状況を随時ご案内し、年度途中の入園が可能となるよう取り組んでおります。

 待機児童数の算定については、全国の自治体が国の基準に則り実施しています。基準を変えることは考えていません。

 今年度策定する「第3期練馬区子ども・子育て支援事業計画」において、昨年度実施したニーズの調査の結果を踏まえ、今後の保育需要を適切に算定し、待機児童ゼロを継続できるよう取り組んでまいります。私からは以上です。

 

 第2に聞きたいのは巡回指導・巡回支援のありかたです。区による見回りは福祉部による指導監査(=実地指導)と子ども家庭部による巡回支援に分担されます。福祉部はおおむね3年に1度、子ども家庭部はおおむね1年に1~2回です。福祉部公表の報告書を見ると「在園児数に見合う面積が不足している」「保育士が適正に配置されていない」「事故報告が行われていない」「避難訓練をしていない」「雇い入れ時に職員が検便をとっていない」等、「文書指摘」の履歴が数おおく出てきます。

 評価の種類は「Aの助言指導」「Bの口頭指導」「Cの文書指摘」の3段階あり比較的軽微なAとBについては口頭で済ませるということなので、「文書指摘」となれば、それが一時的な不具合であっても規則違反は明らかです。子どもの安全にも関わりかねないような「文書指摘」が令和4年度の一般指導検査では155施設中、75施設で確認できました。わたしが聞き取りをした歴史のある民間園園長は「文書指摘を受けるなんて恥ずかしいことだと、みんな言っている」と話してくれました。このような事例が大量に発覚していることは問題だと考えますが区の認識をお答えください。

 また、それらの「文書指摘」はほどなくして、ほぼ「改善済み」とされていますが、問題は何をもって改善としたかです。証拠写真や書類、電話でのヒアリングだけで終わらせているケースも多いと聞きますが、再度訪問して改善を確認すべきです。グローバルキッズの書類偽装と不正請求で揺れた豊島区の担当課長は「書類を偽造されると自治体単独では見つけることはほぼ難しい。現場に行って保育士さんの声を聞く、聞きながら、おかしいなと思ったところはしっかりと確認していく、これに尽きる」との議会答弁を2022年にしています。うかがった2点で答弁ねがいます。

 くわえて、子ども家庭部による巡回支援は結果が公表されていません。2018年10月、練馬区の認可外保育施設「若草ベビールーム」で生後6カ月の乳児が死亡した事故の検証委員会報告書を読むと、「当該施設に様々な指摘が入っていたことを保護者は知らなかった」とされており、保護者は「指導が入っていた施設が運営できていたなんて愕然とした」とメディアに述べています。つまり保護者らが求めているのはありのままの正確な情報です。

 ぜひ巡回支援の結果を公表していただきたいと思います。くわえて、指導監査と巡回支援の結果の両方を「入園のしおり」に封入されている各施設の欄にQRコード等にして明記すべきではないでしょうか。2点について答弁ねがいます。

 第3に聞きたいのは1年保育による職員業務への弊害です。現在、幼稚園2園で1年保育を実施していますが、それぞれ4人の園長経験者が現場従事しています。園長経験者は保育課と計画調整課にまたがって27人おり、無認可園など区内310施設以上の巡回支援に年間1回~2回あたっています。問題はそのうち8人分の人手が削がれ本来業務が手薄になっているのではという疑問です。

 区は「オンラインや電話のやり取り等で工夫しており支障ない」と繰り返しますが、3割減の人員体制を容易に埋められるとは考えられませんが、問題ないとする具体的な根拠を聞かせてください。また、施設に足を運んで初めて気づくことは多いと思いますが、それが一部でも未実施だとすれば齟齬も生じるのではないでしょうか。

 区は第3次ビジョンで「専門職である区職員が保育施設に巡回する回数を増やし、保育水準の維持向上を図る」として巡回支援の充実を唱えています。この課題をいまの状況でどう実現していくのか、その答弁もあわせてお願いし、この項を終わります。

【関口こども家庭部長】私から、保育所における指導検査等についてお答えします。

 指導検査は子ども・子育て支援法等に基づき、保育サービスの質の確保、給付費等の支給の適正化を図ることを目的として福祉部が行っています。検査基準に照らして改善すべき事項が認められる場合、文書または口頭により指摘し、速やかな改善を求めています。

 令和4年度に文書指摘を受けた75施設の内容は、その多くが、衛生面での対応、施設面積や勤務シフトの考え方などに対する理解不足によるものです。指摘内容の改善状況については、改善報告書等の提出や施設職員からのヒアリングにより確認するほか、必要に応じて再度現地で検査を行っています。また、指摘内容については、保育所等の設置者や施設長などを対象とした動画配信による講習等で具体的な事例を共有するなど、適正化に取り組んでいます。

 保育課では、区立保育園の園長経験者が区内全ての保育施設に、年1回から2回程度巡回支援を行っています。巡回支援では、保育内容や安全対策等の相談に応じて助言等を行っており、指導検査とは目的が異なります。

 巡回の際には、個々の園児に応じた保育のあり方などについてアドバイスを求められることも多くあり、相談内容を公表するべきものとは考えておりません。指導検査の結果は、実施要綱に基づき、既に区ホームページで公開しており、「保育利用のご案内」等への記載は考えておりません。

 第3次みどりの風吹くまちビジョンでは、保育水準の維持向上に向けて、巡回支援の充実に取り組むこととしています。具体的には、安全管理などテーマを絞った施設訪問や訪問前後に実施しているオンライン・架電での状況確認、アドバイス内容を記載した支援通信の発行など、これまでの経験を活かした支援を進めています。

 巡回支援を担う職員の一部に2歳児1年保育事業を兼務する職員もいますが、業務に支障が出ないように取り組んでおり、今年度も、全ての保育施設に対して巡回支援を実施します。私からは以上です。

 

 次に市販薬オーバードーズへの対策について伺います。オーバードーズとは薬局やドラッグストアなどで購入できる風邪薬や咳止めを一度に大量服用することです。

 市販薬であっても麻薬や覚醒剤と同様の成分が微量に含まれているため、一度に大量服用すると一時的に気分が落ち着いたり、高揚したりする効果が得られます。しかし、繰り返せばそれまでの量では効果が得られなくなり、依存すれば自身で止められず、肝機能障害や意識障害を引き起こして最悪の場合は死に至ります。

 国立精神・神経医療研究センターの調査によると、10代の薬物関連精神障害患者が主に使用した薬物についての調査結果では、咳止めや風邪薬などの市販薬の割合が近年急増し、2022年度は市販薬が65.2%を占めています。また、過去1年以内に市販薬の乱用経験がある高校生の割合は60人に1人と深刻な状況になっている事が明らかになっており、都内小学校で児童が持ち込んだ薬を過剰摂取し救急搬送されたことも報じられています。

 市販薬は、違法薬物と違い簡単に購入できることもあり、オーバードーズは従来の違反薬物と比べて、女性が多く非行歴が少ないなどの特徴があるとされます。背景には、学校や家庭で感じる不安や葛藤、つらい気持ちがあり、それを和らげるために市販薬に頼ってしまうと考えられます。いじめや虐待、学校などでの孤立など深刻な問題が潜んでいる場合もあります。

 練馬区では青少年の薬物乱用防止の取組として、照姫まつりや練馬まつり等のイベントでの啓発用チラシの配布や全区立小中学校での薬物乱用防止教室の開催、区ホームページ等から国や都の相談窓口の周知を行っています。配布しているチラシ等は大麻や覚醒剤などが中心で薬物の恐ろしさを強調する内容となっています。

 しかし、オーバードーズの場合は「薬物の恐ろしさを強調するような古典的な教育は有効ではない。身近な問題と捉え、教員と生徒がともに解決策を考えることが重要だ」と国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の嶋根卓也氏は指摘しています。足立区や北区ではホームページ上で大麻や覚せい剤による薬物乱用のページとは分け、市販薬オーバードーズについてのページを設け、啓発と共に相談を呼びかけています。

 練馬区でも市販薬オーバードーズの特性を踏まえ、正しい知識や早めに専門機関に相談する事の重要性を区ホームページや薬物乱用防止教室などを通じて伝える取組みを強化してもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。若年層のオーバードーズの背景には、社会的孤立や生きづらさがあるだけに、相談窓口や居場所づくりの施策の充実も必要です。

 練馬区では、昨年7月からweb等を使って相談する「ねりまホッとアプリ+」の運用を開始しました。子どもたちが安心して悩みを相談できるものにするためには相談しやすい環境を整えると共に、悩みを抱えた時に子ども自身がそれを客観的に把握し周囲に助けを求められるようにする事や、子どものSOSに周囲が気づき早期に対応することが必要です。

 そのためには、スクールソーシャルワーカー等との連携や職員研修、体制の強化が必要と考えます。区の考えを伺います。お答えください。

【石原練馬区保健所長】私から、若者の薬物乱用防止対策についてお答えします。

 若者のオーバードーズをはじめとする薬物乱用による健康被害は、深刻な問題です。

 とりわけ、風邪薬や咳止めなどの市販薬は入手し易いことから、過剰摂取の危険性について周知するとともに、販売者への啓発も重要と考えています。

 保健所では、薬局やドラッグストアに対して、濫用などのおそれのある医薬品の販売を適切に行うよう、国が示すガイドラインに基づき、原則一人一箱までの販売とすることや、若年層には氏名・年齢を聞き取ることなどを指導しています。

 保護司や民生児童委員等により構成される東京都薬物乱用防止推進練馬区地区協議会では、今年度から薬剤師会のメンバーを加え、オーバードーズ対策の検討を開始しています。

 また、区ホームページでは、オーバードーズに関する都の相談チャットボットを紹介しています。

 引き続き、地域の団体や学校などと連携しながら、若者の薬物乱用防止に取り組んでまいります。私からは以上です。

【三浦教育振興部長】私から、教育に関するご質問にお答えします。

 はじめに、児童・生徒への相談体制についてです。

 昨年7月に、区立小中学校の児童・生徒に配布したタブレットパソコンなどから悩み事等の相談ができる、ねりまホッとアプリプラスを導入し、より相談しやすい環境を整えました。また、小中学校では、ふれあい調査アンケートを年3回実施するとともに、小学3年生・5年生と中学校1年生全員を対象とした面接や、SOSの出し方に関する指導を行うなど、困ったときに児童・生徒自らが助けを求める力の育成を図っています。

 生活指導担当の教員に対し、オーバードーズを含めた薬物乱用に関する研修を今年度から実施します。

 さらに、気がかりな児童・生徒を早期に相談や支援につなげるため、昨年度から、スクールソーシャルワーカーを増員し、学校訪問の回数を増やしています。今年度は、常勤の統括スクールソーシャルワーカーを配置し、すみやかに関係機関と連携した支援ができるよう、体制を強化しました。

 引き続き、子どもたちへの支援の充実に取り組んでまいります。

 

 次に、介護報酬ひき下げとその影響についてお聞きします。区は介護人材確保の必要性を述べたうえで、「介護職員の処遇改善については制度設計した国の責任において実施すべきもので、国に労働条件の改善、人材確保・育成・定着の支援策を要請している」ということです。

 しかし、今回の介護報酬の改定は、区が目指す地域包括ケアシステムの要である訪問介護、在宅介護の報酬を引き下げるというものでした。今でも介護現場では人手不足がもっとも深刻なのは訪問介護で83.5%が不足を訴えており、ホームヘルパーの有効求人倍率は15.5倍にのぼり、高齢化が深刻で平均年齢は54.4歳。65歳以上が24.4%を占め、70歳以上も12.2%です。高齢のヘルパーが辞めたいと言っても週1、2回でも入ってもらうよう必死に慰留を求めるそうです。80代のヘルパーが紙おむつをはいて身体介護をしている例すらあるということです。

 ヘルパー不足でケアマネージャがケアプランを立てても必要な訪問介護回数を満たすことができなくなっている現場もあり、最低1日3回おむつ交換が必要でも、それができず制度的なネグレクトが起きている実態もあるということです。

 結局、国は介護の財源を削減し安上がりの介護制度にしてきた結果、こうした実態を作り出していることは明らかで、私どもの質問で事業者はやむをえず無資格の高齢者や外国人に頼らざるを得ない状況に陥っていることを問題にしているのに、区は無資格者や外国人に介護を担わせること自体が、その質や利用者の尊厳を守ることに逆行するかのように仕立て、多くの介護職員の労働を踏みにじっているかのように描くのは実態を無視した誹謗中傷でしかありません。

 やはり、一番問題なのは国の報酬ひき下げです。2000年の制度創設以来、給付適正化の名で同居家族がいれば生活援助が利用できなくなり、60分で区切られていた生活援助の基本サービスが45分に短縮される等、生活援助に利用制限を設けたうえ、要支援1、2の高齢者の訪問介護から保険給付を外したりと、まさしく改悪の連続でした。こうしたもとで行われた訪問介護の報酬ひき下げです。こうした現状を鑑みれば、訪問介護費の引き下げの撤回と再改定こそ国に求めるべきではありませんか。答弁を求めます。

 また、区は国が今年度から3つの処遇改善加算を一本化し、今年度2.5%、来年度2%のベースアップにつながるよう加算率の引き上げを行うとして、事業者が処遇改善加算を取得できるよう支援するとも答弁しています。しかし実際には、4.5%引き上げの財源や計算根拠を示せないばかりか、事業者の経営努力に期待するというものになっています。

 しかも今年度の2.5%引き上げ自体が低すぎます。2023年平均の消費者物価指数3.1%上昇に及ばないばかりか、2024年春闘での賃上げ率は平均5.24%のベースアップ目標としています。そうしたことも考えれば、そもそも全産業平均より月6万円低い介護職の賃金は他職種と比べ、さらに格差が広がるばかりで他業種への人材の流出に歯止めがかからなくなることは明白です。

 そもそも介護現場の抜本的な賃金・労働環境の引き上げが求められているときに、加算方式自体が利用者負担に直結し、介護保険料を上昇させるもので根本的に矛盾したやり方だと言わざるを得ません。区は国の基本報酬を上げずに、取得率も低い加算方式で済まそうというやり方をどう考えているのでしょうか。お答えください。

 さらに区は、各種研修や助成、介護福祉士養成施設の整備、宿舎借り上げ補助など多くの事業に取り組んでいます。それは重要だと考えます。しかし、それだけで人材不足を解決することはできません。区として区長会にも働きかけ、国に対して介護で働く全職種を対象に当面月額8万円以上の賃上げを全額国庫負担で行うよう具体的に求めるべきです。

 合わせて、窓口負担2割対象者の拡大や要介護1・2の保険給付外しなどの一連の改悪はすべて中止し、「生産性向上」の名で人員基準引き下げ等の検討をやめるよう求めるべきです。3点お答えください。

【吉岡高齢施策担当部長】次に介護保険についてです。

 介護保険制度は、創設から24年経過し、要介護高齢者とその家族の生活の維持に欠かせないものとなっています。生産年齢人口の減少が見込まれる中、介護人材の確保がますます厳しくなることが想定されています。区は、練馬福祉人材育成・研修センターによる介護従事者養成研修や資格取得費用助成の実施など、区独自に介護人材の確保・育成・定着の支援に取り組んでいます。

 本年4月に行われた訪問介護の基本報酬の改定については、区内の訪問介護事業者からは実情に沿っていないと聞いています。人材確保の基盤となる介護報酬の改定は、介護職員を十分に確保・処遇できる水準となるよう、制度設計をした国の責任において実施するべきものです。

 区は、これまで国に対し、介護報酬の引上げや介護職員の処遇改善を求めてきましたが、全国市長会等を通じて引き続き要望をしていきます。

 介護報酬は基本報酬に加え、各種の加算で構成されています。国は、加算の一つである処遇改善加算を6月から見直しし、多くの事業者に活用されるよう、これまで三種類に分かれていたものを一本化するとともに、加算率の上限を引き上げました。国は、これにより、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップにつなげていくとしています。加算を取得するためには、介護職員の賃金体系や昇給の仕組みを定めたキャリアパスの整備などが要件となります。

 区は、介護事業者の労働環境の整備を評価して加算する仕組みは、介護職員にとっても安心して働ける職場の増加につながるものと考えています。介護労働安定センターが実施する処遇改善加算のセミナーや無料相談を周知し、介護事業者が円滑に手続できるように支援しています。

 介護サービスの利用者負担が2割となる判断基準の見直しについては、昨年12月の社会保障審議会介護保険部会において、令和9年度からの第10期計画の開始までに結論を出す方針が示されました。要介護1・2の方への生活援助サービス等に関する給付の在り方についても一昨年度の同部会において、現行の総合事業に関する評価・分析を行い、介護保険の運営し主体である区市町村の意向や利用者の影響等も踏まえながら、同じく第10期計画の開始までに結論を出すこととされました。

 人員基準の見直しにおける介護現場への介護ロボット等のICTの導入は、介護職員が専門の業務に従事できることを前提としています。職員が対人サービスに注力できる環境を整え、介護の質と介護現場の効率性を向上するための取組です。

 高齢化が急速に進行するなかで、介護保険の持続可能性を維持していくためには、制度の見直しの検討は必要なものと考えています。国に検討の中止を求める考えはありません。私からは以上です。

 

 つぎに学校トイレへの生理用ナプキン設置と包括的性教育について聞きます。東京23区内で生理用ナプキンを学校トイレに配置している自治体が17区にのぼった一方、従来どおり保健室でしか提供していない自治体が練馬区はじめ6区あることが分かりました。

 すでにトイレに配置している自治体では、いずれも令和3年~今年度までに恒久的な予算措置として施策をスタートさせ、ほとんどの自治体で女子児童・生徒からの要望の強いトイレ〝個室〟への配置としていることも重要です。子どもや保護者からは、「緊急時や忘れたときに助かった」「保健室に取りにいくのは恥ずかしかったけど、安心につながった」との感想が寄せられています。

 区へはこれまでも生理用品にかかわる要望を届けてきましたが、トイレ配置については「保健室配布は児童・生徒から様々な相談を受けたり、養護教諭が本人や家族の状況を把握する契機にもなっている」との理由から消極的でした。また区は、「各学校では保健室での生理用品の配布や日常的に受けている各種相談の中で実態を把握し、適切に対応している」とも答弁しています。

 そこで聞きますが、小学校6年生と中学生の女子児童生徒は約9280人、学級数は555クラスです。区内小中の保健室で提供している生理用品は令和4年度で年間1500件程度ということなので、1クラスあたり平均で年間のべ3人弱しか保健室で生理用品を受け取っていないということになります。それほど少ないサンプルで本当に区のいう「実態把握や適切な対応」ができてきたのでしょうか。

 全国の先行自治体では、ナプキンをトイレ配置にして以降、それまで保健室でのみ提供していた時と比べて格段に多くのナプキン利用があったとの報告も寄せられています。ここから分かることは、これまでも多くの需要があったにも関わらず保健室でしか提供されていないために取りに来られなかった女子児童生徒がたくさんいたということです。したがって、今後はトイレットペーパーと同様にトイレに行けばいつでもそこに必ずナプキンがあるという社会的インフラとして位置づけなおすべきだと考えます。

 たしかに、生理用ナプキンをトイレ設置した学校の養護教員からは家庭環境や課題背景を把握しづらくなり、性に関わる問題を捕捉しづらくなったという意見も返ってきています。しかし、保健室ふくめ、いつでもどこでも性と生殖について相談できる教育現場こそ必要ではないでしょうか。

 リプロダクティブヘルス&ライツにかかわる相談を恥じたり、タブー視するという課題は包括的性教育の実践で対応でき、懸念することはありません。そして、学校においては従来のように保健室で相談を待つという受け身の姿勢ではなく、年間あたり区内8校各1コマ程度の実績にとどまってきた助産師などと連携した性教育の出前授業を必須カリキュラムに組み直したり、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを参考に「歯止め規定」にいまこそ踏み込むなど、包括的性教育に取り組むことで解消できる課題はたくさんあると思います。区の見解を聞かせてください。

 あとは予算がいくらかかるかということです。練馬区と同程度の人口規模を持つ先進自治体では、世田谷区で今年度予算143万円、江戸川区で87万円程度の捻出で済んでいます。練馬区は今年度から学校給食費の完全無償化を実現しました。つぎは学校トイレへの生理用品の配置が急務です。すみやかな配置を求めます。

【三浦教育振興部長】次に、区立小中学校における生理用品の配布についてです。

 各学校では、養護教員が児童生徒の身体や家庭の状況について把握する契機とするため、保健室で生理用品の配布をしてきました。学校や保護者からは、「早急な対応が必要となり、保健室まで来ることが困難な場合がある」「小中学生は、いつ必要になるかという不安が大きい」などのご意見が寄せられています。

 このため、今後トイレにも設置するよう学校と協議を進めます。

 次に、性教員についてです。

 現在、区立小中学校では学習指導要領に基づき、主に保健分野の学習において、望ましい人間関係や体の発達段階に応じた性に関する正しい知識や考え方を身に付ける学習を行っています。また、あらゆる教育活動を通じて、互いの人権や自他の生命を尊重する心情を育む教育を展開し、国際セクシャリティ教育ガイダンスが示すコンセプトと同様の内容を学んでいます。

 思春期に表れる体の変化は、変化の仕方や表れる時期に個人差があること、他人と違うと感じるなど、不安があるときは養護教諭や担任、スクールカウンセラーなどに相談できることを伝え、安心して学校生活が送れるよう指導しています。

 学校が、性行為や避妊など学習指導要領に示されていない内容を校長の判断により実施する場合は、平成31年3月に東京都教育委員会が定めた「性教育の手引き」に基づき、児童生徒の実態を十分踏まえ、保護者に丁寧に説明し、理解・了承を得て実施するなどの慎重な対応を行うこととしています。

 児童生徒の身体的・精神的発達や、個々の性に関する知識の個人差にも十分配慮する必要があるため、すべての学校で一律に実施するものではありません。私からは以上です。

 

 さいごに区長による小池ゆりこ東京都知事への立候補要請についてお聞きします。過日、前川区長を含む52首長が来たる東京都知事選挙で立候補表明さえしていない現職都知事に対し、立候補要請をされたと報道がありました。この件を「区長への手紙」でただした区民に対し、区長いち個人として賛同したものであり、区としての要請ではないため回答できないと応じたといいます。

 しかし、公人である以上、説明責任からは逃れられないのではないでしょうか。

 小池都政は、神宮外苑の問題でユネスコのイコモスから警告を受けているにもかかわらず、数千本の樹木を伐採する再開発を推進しています。関東大震災での朝鮮人虐殺の問題では、東京都も史実と認め、二度と悲劇を繰り返さないと歴代都知事が追悼文を送ってきましたが、小池都知事はそれを中止し、これまでの東京都の努力を踏みにじっています。さらに経歴詐称疑惑まで付いて離れません。

 こうした多くの問題を抱える人物になぜ立候補を要請したのか、お答えください。

 区長の言動は多様な区民がいるなかで74万区民の総意と受け取られかねず、不適切です。いまからでも立候補要請を撤回すべきではありませんか。区長個人の要請であれば区長自身がお答えください。

 以上で日本共産党練馬区議団を代表しての一般質問を終わります。

【前川燿男区長】お答えいたします。東京都知事選挙についてです。 

今回の出馬要請は、政治に携わる者として、自らの政治信念に基づいて行ったものです。

 小池知事が就任されてからの約八年間に、大江戸線の延伸は実現に向けて本格的に動き出しました。今月1日には、東京都練馬児童相談所が区の子ども家庭支援センターと同一施設内に開設されましたが、これは、私が生涯をかけて取り組んできた児童福祉の根幹に関わるものです。

 いずれも都との緊密な連携が大きな成果をあげているものです。

 こうした政策を更に前に進めるため、引き続き東京都の舵取りを担って頂きたいと考えています。

 私からは以上です。

 そのほかの質問につきましては、教育長および関係部長から答弁いたします。

 

 

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