日本共産党練馬区議団を代表して「陳情152号豊玉保育園の民間委託計画に関して調査と検証を求めることについて」の願意に賛成の立場から討論を行います。
この陳情は、豊玉保育園の民間委託計画について、第一に委託の必要性と現状の問題点を精査し、説明責任を果たすこと。 第二に保育の質を確保するため、保育士不足解消の対策を講じること。そして、第三に2つの要望が達成されない限り委託計画を凍結するよう求めるものです。
賛成理由の第一は、区が説明責任を果たしているとは言えないからです。
この間、保護者向けの説明会も行われましたが、不安は解消されず、保護者のみなさんはさらに60項目を超える質問を区に提出しました。
しかし、区は「委託園も区立園に変わりない」「アンケートで高い評価を受けている」から問題ないなどと従来の回答を繰り返し、納得を得ようとする姿勢が見られません。保護者の中からは「もう決まったことだからと、結論ありきのものという印象しかありません」と区に対する不満の声が出されています。
委託事業者の選定過程についても「事業者が決定された後になってから保護者の要望を協議しても意味がない。あらかじめ要望を理解したうえで選定してほしい」との声も出されていますが、区は相変わらず、プロポーザル以外は選定過程を非公開とし、事前に当事者の声を聴くことさえ拒んでいます。
このように保護者への説明責任を果たさず、当事者の声を無視した計画だからこそ今回のような陳情が出されたのではないでしょうか。
第二の理由は、保育の質が確保されているかという点についての検証が行われていないことです。 区が提出した資料は、直近で委託された6園分の検証結果報告書、委託園全体の人件費比率と離職率、それに異動率に関するものでした。
しかし、保育の質の要となる保育士の処遇についての資料は提出されていません。しかも性質のことなる離職率と異動率を合算した数値で委託園と直営園を強引に比較するということまで行いました。
報告書では委託によって1園あたり年間1,200万~7,600万円、6園で実に3.2憶円も財政効果があることが強調されていますが、逆に言えば委託費の8割に上る人件費自体が圧縮され、保育士一人当たりの給与が直営園に比べて低く抑え込まれてことを意味するのではないでしょうか。
委託園の離職率は平均で10%を超えており、直営園の2%台に比べ高く、特に関町第二保育園ではH28年に22.2%、桜台第二保育園ではH29年に18.2%と直営園平均の10倍近くにもなります。 ところが区はその理由すら把握していません。これではまともな検証と言えるのでしょうか。
利用者アンケートでは確かに委託園について高い満足度を示していますが、直営園に子どもを預けた経験がない保護者にとっては委託園がすべてであり、直営園との比較はできません。 しかも保活の厳しさから質の問題が二の次になってしまいます。基準の低い若草ベビールームのような施設に子どもを預けてしまう理由もこうした焦りが保護者の中にあるからではないでしょうか。
第三の理由は、保育士不足への有効な対策がなされていないことです。それは保護者への十分な説明責任も、保育の質にかかわる検証もできていないことからして明らかです。
今回の陳情には1500名を超える人たちの思いが込められています。 文教児童青少年委員会はそれを受け止め、しっかりとした資料を出し、十分な審議を行って結論を出すべきです。
しかし、陳情を不採択にした委員の多くは、この陳情についての議論にほとんど参加せず、不採択の理由さえまともに示すことができませんでした。これでは委員会としての役割を果たしているとは言えません。
直営保育園は、すべての子どもたちの受け皿となってきました。特に障害児やその保護者にとって拠りどころとなっています。ある障害児をもつお母さんは、区立を含む12園の保育所に見学や面談を申込みました。その中で、民間では、経験が少なく、職員の加配を必要する障害児は敬遠されがちで、見学や面談さえ断った事業者があったと言います。
一方直営園では、ベテランの職員が余裕をもって子どもたちに接してくれ、とても安心できたと話してくれました。長年の経験の蓄積とベテラン職員、そして40園にも上る保育集団が練馬の保育の水準を守ってきたのです。 こうした直営園をきちんと評価し、充実させることこそ区内全体の保育サービスを向上させることに繋がるのではないでしょうか。
今こそ1541名に上る署名の願意を真摯に受け止め、根拠のない委託化計画はただちに中止するよう求め、陳情152号に対する賛成討論を終わります。