日本共産党練馬区議団を代表して、議案第30号
練馬区国民健康保険条例の一部改正条例に反対の立場から討論を行います。
今回の条例改正は、23区統一保険料方式における共通基準改定による保険料率の引き上げ、後期高齢者支援金、介護納付金それぞれの均等割り額の引き上げとともに、高額療養費の保険料算入比率の再調整を行い、低所得者の2割~7割軽減に関する所得基準を改定する内容となっています。
反対理由の第一は、区民の負担能力を超えた高すぎる保険料になっていることです。
今回の改定により、2017年度の国保料は、均等割が前年度比3,300円増の4万9500円に、所得割を9.43%に引き上げることで、一人あたりの平均保険料は11万8441円になり、前年度と比較して7,252円も値上げされます。これは、国保制度の算定方式が旧但し書き方式に変更した2011年度以降、保険料額、保険料率とも最大の値上げです。
区の保険料試算では、ほとんどすべての世帯で負担増になっており、例えば、給与所得者3人世帯で年収300万円の場合、1万8,645円の値上げで、年間約30万円もの国保料を支払わなくてはなりません。同じ給与水準でも、協会けんぽ加入者の健康保険料は15万5,376円、国保加入者は倍近くも負担が重く、実に年収のほぼ一割にもなっており、支払い能力の限界を超えていることは明らかです。
第二は、保険料の値上げが、過酷な収納対策をさらにエスカレートさせてしまうことです。
練馬区の国保加入者は、非課税の保険料均等割のみ世帯が約4割、年間保険料が20万円未満の低所得世帯が75%以上を占めるなか、滞納世帯は全体の25%にも上ります。資格証発行は滞納世帯の12%、3,480世帯で件数・率とも23区トップレベルの厳しいペナルティがかけられています。
高すぎる保険料を払いきれず資格証になっている区民の中には、慢性肝炎や糖尿病など慢性疾患を抱えた方も多く、区内の医療機関からも、健康保険が使えなくなって患者の受診抑制や治療中断の事例が相次いでいるとの相談も寄せられています。治療や服薬の中断が命に関わるような人に対しても資格証の発行や過酷な収納対策が行われ、医療の受診機会を奪う深刻な実態がこの練馬で起こっているのです。
国保料の差し押さえも昨年は897件とこの5年で最大です。東京都は、被保険者数10万人以上で新規500件以上の差し押さえを行うと4000万円、300件なら2000万円など各区の差し押さえ件数や収納実績に応じて報奨金を交付する仕組みで滞納処分を競わせています。生命保険や銀行、給与や勤め先など社会的信用にかかわる領域にまで踏み込んで、自治体が過酷な取り立てやペナルティを科し、払えない人をさらに困窮に追い詰めるやり方は許されません。
第三は、国保制度の広域化を前提とした値上げだということです。
2018年度の広域化に向けて、高額療養費の保険料賦課総額への算入のロードマップが策定され、2014年から4年間で高額療養費分を4分の1ずつ算入していることが、保険料の高騰の大きな要因になっています。2016年と17年については医療費の伸びや保険料の値上げ幅が大きすぎるとの判断で再調整していますが、広域化を目前に控え、最終年度で一気に総額を保険料に転嫁するとこれまで以上に大幅な値上げになることは避けられません。
しかも、広域化は国保実務が自治体に残る一方で、東京都が財政運営の責任主体となり、各自治体の納付金、標準保険料率の決定をすることから、23区区長会での保険料高騰を抑制する法定外繰入れなどの調整機能も今まで通りとはなりません。広域化後に、多摩地域や島しょも合わせた包括的・広域的な運営になるため、23区だけ特別扱いはできないと標準保険料ベースで一般会計からの繰り入れが認められるか、法定外負担分を都区財調で措置されるかどうかも現時点では不透明です。広域化は、国保制度の根本的問題の解決にならないばかりか、一般財源の繰り入れの解消や保険料引き上げが迫られ、収納強化や医療費抑制など圧力が強まり、区民生活により厳しい影響を及ぼしかねません。
今回、23区区長会は昨年12月、国に対して、国保制度の安定的・持続的な運営のために、低所得者や子育て世帯などへの軽減対策とともに国保財政基盤の強化拡充のために国庫負担割合や調整交付金の増額など財政措置を求める緊急要望を行いました。
練馬区議会でも今議会、国庫負担割合の引き上げと減免制度の改善を強く求める趣旨の意見書を全会一致で採択しています。
国保制度の構造的矛盾の解決や被保険者の負担軽減の必要性が喫緊の課題として共通認識になっているもと、区と区議会は、区民のいのちと健康・くらしを守る立場で広域化は中止を求め、高すぎる国保料の抜本的な引き下げや保険料高騰を抑制するための最大の支援を国と東京都に求めるべきです。
以上の理由を述べて、日本共産党練馬区議団を代表としての反対討論といたします。