2017年2月10日 日本共産党練馬区議団 島田 拓
日本共産党練馬区議団を代表して一般質問を行います。
最初に区長の基本姿勢として、現在の経済情勢と、そのもとでの行うべき対策についてです。
安倍政権の経済政策である「アベノミクス」が始まって4年になりますが、その行き詰まりと破綻は明らかとなっています。
日銀の「異次元金融緩和」や3年間で4兆円もの企業減税によって、大企業は3年連続で「史上最高益」を更新し、内部留保は386兆円にも達しました。大株主など富裕層にも巨額の富がもたらされ、純資産5億円以上を保有する超富裕層では、一人当たりの金融資産はこの15年間で2倍の13.5億円にもなっています。
その一方で労働者の実質賃金はこの4年間で、年額19万円も減り、家計消費は実質15か月連続で対前年度比マイナスとなりました。結局、大企業などに多額の税金をつぎ込んでも、内部留保としてため込まれるだけで、賃金にはほとんど反映されず、実体経済には全く効果がないばかりか、その分社会保障費が3.3兆円も削られるなど、庶民の暮らしは苦しくなるばかりです。
1990年代後半以降、新自由主義的な経済政策により、あらゆる分野で格差と貧困が広がり、労働者の平均賃金は1997年をピークに55万6千円も減少しました。とりわけ年収500万円から1,000万円の中間層の減少や疲弊が深刻になっています。今や格差の問題は一部の貧困層だけの問題ではなく、倒産や失業・リストラ・病気・介護などで職を失えば、中間層含め誰もが貧困に陥る経済社会となっているのです。
安倍首相は、破綻済みの「アベノミクスをふかしながら、経済をしっかり成長させていく」としていますが、区も、この間の経済評価について「緩やかな景気回復に向かうもの」と答弁してきました。
これは今でも同じ認識なのでしょうか。いま必要なことは貧困層への支援とともに、景気回復のカギを握る中間層の疲弊をいかに克服するかを経済政策の基本に据えることが重要だと考えますが、2点認識を伺います。
今日の格差と貧困の深刻化は、大企業の利益最優先の新自由主義、構造改革の経済政策が強行された結果に他なりません。
日本共産党は、この原因に正面からメスを入れる4つの改革を提案しています。
1つは能力に応じて負担する、公正・公平な税の集め方の改革。
2つは社会保障、若者、子育て中心の予算にする税金の使い方の改革。
3つは8時間働けば普通に暮らせる働き方の改革。
4つは大企業と中小企業、大都市と地方などの格差を是正する産業構造の改革です。
もちろん、これは基本的には国が行うべき改革ですが、同時に問題の原因との関係で、地方自治体として対処していかなければ効果が上がらない問題です。
ところがこれまでの区政を見ると、本来国民の所得を温めなければいけない時に、金銭給付的な施策は基本廃止。区の正規職員を大幅に削減し、委託・民営化の推進で不安定雇用を増大させています。
各種保険料は連続的に値上げし、所得が低い人では払えないような高い保険料になっています。税金の使い方でも福祉や区民サービスを切り下げる一方、大型道路や再開発を最優先する始末です。区政改革もこれまでの区政のあり方に拍車をかけるものでしかありません。これでは、福祉の増進という地方自治体のあり方とともに、景気を改善していくという点から見ても逆行していると言わざるを得ません。
持続可能な区政運営をいうのであれば、大型道路整備や委託・民営化を誘導する仕組みを正し、福祉の増進を文字通り行える必要な財政的援助を国に強く求めるべきです。同時に、区としても区民の所得を増やし、負担の軽減で区民の懐を温める施策にこそ力を注ぐことが必要です。
全国の多くの自治体で取り組み、経済波及効果が数十倍と試され済みの住宅リフォーム助成制度や、プレミアム付き商品券、ゼロ金利融資など実績のある景気対策はすぐにでも取り組むべきと考えますが、区長の見解をお示しください。
【佐々木企画部長】
わが国の経済情勢は、雇用・所得環境の改善が続いており、政府の様々な政策の効果もあって穏やかな回復に向かうことが期待されており、認識は変わっておりません。一方で、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動に留意する必要があることから、先行きは予断を許しません。なかでもトランプ大統領の政策の動向には注視が必要と考えております。
経済政策は、こうした国内外の経済情勢や、少子高齢化をはじめとする社会状況の変化、国民生活の状況を踏まえ、国が、金融、財政、税制、社会保障などを総合的に進めるべきものです。現在、働き方改革や子育て支援など、中間層を含め幅広く配慮した取組が推進されていると認識しております。
基礎的自治体としての区の役割は、時代状況と地域の実態に即して区民サービスを向上し、厳しい財政状況にあってもこれを継続していく持続可能な仕組みをつくることであります。ご指摘を受けるまでもなく、そのために必要な財源は、これまでも国に求めてまいりました。
お話のスーパーサポート融資やプレミアム付き商品券は、かつてない経済状況の悪化を受けて緊急避難的・時限的に実施したものであり、現在の経済状況で実施する必要はないものと考えております。また、住宅リフォーム助成制度は、すでに住宅修築資金の融資あっせんを行っていることから、実施する考えはありません。
次に2017年度予算案です。
今年度予算は、アクションプラン最終年度、区政改革の開始予算ということになりますが、本当に区民のための予算と言えるのでしょうか。
この間わが党が求めてきたケースワーカーの増員や内方線付点字ブロック整備促進など前進面もありました。
しかし、予算のあらましで述べている予算編成の考え方は「わが国の経済情勢は雇用・所得環境の改善が続いており」という認識に基づくものです。先にも述べたように、国民は大変な状況に置かれているのであり、予算編成にあたって、区民の苦しみ、子どもや高齢者のことを考えることこそが大事ではないのでしょうか。答弁を願います。
「子どもの成長と子育て支援」は、確かに新しい施策もあります。
しかし、校舎改築費などを除けば他の施策はわずかな予算であり、認可保育所の増設もわずか1か所だけです。中には練馬子ども園、ねりっこクラブなどの区民の願いとはかけ離れている施策もあります。待機児問題が深刻化する中で、これで十分とは言えません。
さらに今回、保育料の値上げ分を活用して、私立幼稚園の入園料補助など行うとしています。もちろんこうした施策の充実は必要と考えますが、一方に負担を強いるようなやり方は本当の意味での充実とは言えません。
「安心して生活できる福祉・医療の充実」でも、新しい施策は目につきますが、予算額が7.1億円と少ないのは、福祉・医療を軽視しているといわれてもしかたがありません。高額医療費や入院時の居住費の値上げなど高齢者に負担増が襲いかかっている状況のもとで、負担軽減や補助の拡充など高齢社会に対応する予算こそ必要です。
「安全・快適な都市に向けた基礎整備」は、都市インフラの計画的変更や都市計画道路の整備、グランドデザインなどが、予算全体である60億6千万円の35%を占めています。他の施策と比べて予算額が高く、まさしく都市インフラ、道路予算といえます。利便性を重視するとして、駅や計画道路周辺のまちづくりを大事にする考え方こそ時代遅れではないでしょうか。
70周年記念事業については、70周年を祝うことにやぶさかではありませんが、財政難を必要以上に強調している区が、花火に2,300万円、パレードに2,200万円もかけるというのは疑問です。
後期アクションプランでは、区民の声を真剣に受け止めて策定することを強く要望します。
ゼロシーリングで枠に当てはめ、スクラップアンドビルドで、区民にとって必要な施策を削り、それを原資に他の施策を拡充するというのであれば、区民の要求に応えられません。「持続可能な財政運営」「区政も大きな困難に直面している」などと必要以上に財政難をいいながら、区民に負担を強いるのではなく、区民とともに歩む予算を組むべきです。答弁を求めます。
【前川区長】
平成29年度当初予算案は、区民サービスの充実と持続可能な財政運営を図り、「改革ねりま」を更に進めるものであります。
歳出総額2,515億円のうち、福祉・医療や子ども・教育に関する経費は1,673億円、全体の67%です。中でも子ども家庭費は、来年度28億円増額しています。
まちづくり事業費は180億円、そのうち道路整備の経費は24億円、全体のわずか1%です。
「区民の苦しみ、子どもや高齢者のことを考えていない」「福祉や区民サービスを切り下げる一方、大型道路や再開発を最優先している」「道路予算である」などというご指摘は、何を根拠におっしゃっているのかまったく理解できません。
また、お話の「安全・快適な都市に向けた基盤整備」60億円余は、アクションプランに掲げる項目に沿って事業を抜き出したものであり、都市インフラ整備の全体を示すものではありません。「他の施策と比べて予算額が高い」という指摘は理解に苦しみます。
こうした主張に無理があることは、実は島田議員自身も気づかれているのではないでしょうか。私が子どもや高齢者に冷たくて、道路整備を優先していると決めつけるという結論があらかじめあって、それに合うストーリーを無理やり作っているのではないかと、ひそかに疑っております。
私は、かねてから共産党の皆様には、デマゴギーやプロパガンダを専らとする方々、こうした方々はこの中にもいるのでありますが、こうした方々とは一線を画して誠実な議論を重んじていると期待するものがありました。しかしながら、今日のご質問を聞いて、落胆の思いを禁じ得ません。一点の信頼が揺らぎ始めています。
議会での議論には、正確な事実認識と的確な論理展開が必要不可欠です。ぜひ、建設的な議論をお願いしたい、切に願っています。私からは以上であります。
その他の質問につきましては、副区長および関係部長が答弁いたします。
【佐々木企画部長】
将来にわたって持続可能な財政運営を維持していくためには、事業の見直しや経費の効率化が必要なことは言うまでもありません。区民サービスを支える財源に限りがある以上、そうした工夫をしなければ、いずれ財政運営が行き詰まってしまうことは自明の理であります。
また、予算の編成にあたっては、議会はもとより、様々な施設やサービスの利用者、関係団体等からの意見・要望を十分にお聞きしたうえで行っております。来年度予算においても、区民サービスの向上を根幹に、子ども・高齢者・障害者等の分野で新規事業を数多く予算化しております。
まさに「区民とともに歩む予算」であると自負しております。
次に、保育園待機児の解消について伺います。
練馬区では、今年4月までに待機児童を解消するとして1,000人規模の定員枠の拡大に取り組み、現在までに1,006人の定員を拡大したとしています。しかし、これで本当に待機児は解消するのでしょうか。
私どもの調べでは、昨年の1次選考時点で募集枠に対し1,499人が枠から漏れ、今年もゼロ作戦を実施したとしてもさらに多い1,531人が枠から外れる計算になります。予算説明では解消後の対策まで打ち出していますが、まず、その見通しをお示しください。
待機児ゼロ作戦では、認証から認可へ移行した4園含め、私立認可保育園290人分はあるものの、多くは5歳まで保証のない小規模保育所や子どもを詰め込む定員枠の拡大で対応しています。
中には19人定員の小規模園の定員枠拡大もされているようですが、これは国の緊急対策による既存保育施設の面積や保育士配置の基準緩和によって可能になった対策なのか、それとも区の基準の範囲内での対策なのかお聞きします。
また来年度の予算案を見ると、定員拡大では認可1か所、地域型3か所となっています。これで本当に充分な対策と言えるのでしょうか。
またゼロ作戦での定員枠の拡大で入所した子どもたちは4月以降もそのままの保育環境で過ごさなければならないのでしょうか。元の定員に戻していくためにも、さらなる認可保育園の増設が必要と考えますが、今後の対応についての区の考えをお聞かせください。
国の待機児問題の緊急対策は、保育の質と安全を守る基準を緩和し、受け入れ枠を広げた詰め込みばかりです。子どもたちを犠牲にした待機児対策は本末転倒です。
全国社会福祉協議会が行った国際比較の調査でも3歳児以上の1人当たりの面積基準は、ストックホルム市は7㎡、パリ市は5㎡に対し日本は約2㎡と、比較した14の国または自治体の中で最低です。
また3歳児の保育士の配置基準もイギリスでは1人の保育士に対して8人の子どもを見るのに対して、日本は1:20、4歳ではイギリスで1:8ですが、日本では1:30です。こうした日本の現状は羊飼いにたとえられるほど低い水準です。日本の認可保育園の最低基準をさらに引き下げることは、子どもの権利を守る保育を進めていく上でも絶対にやめるべきです。
昨年1月に日経DUALが行った調査では、保護者の9割が認可保育園を第1希望にしています。
今回練馬でも第1次選考時点で、応募枠を1,500人も超えているにもかかわらず、小規模園が空いてしまいました。これは大多数の保護者が、職員体制や環境がしっかり確保されており、所得に応じた保育料が設定されている認可保育園を求めていることを示すものです。
私どもは、保育とは、生涯にわたる人間形成の基礎を培うもので、専門的知識と技術を持つ保育士でこそ、命と発達を保障することができるという立場から、量だけでなく、質を備えた認可保育園の整備を中心に進めるべきだと考えます。
今回、東京都の予算案でも保育園の待機児解消目標を来年度1万8,000人、4年間では7万人とし、保育士の給与を1人あたり2万1000円相当引き上るとしています。
また保育園建設のため、23区内で土地を貸し出す場合には固定資産税及び都市計画税の減免措置を創設するとしています。こうした都の支援を十分活用し、認可保育園の増設を大幅に進めるべきです。
また、保育士の賃金引き上げはあるものの、一昨年度まで都が行っていた私立保育園への補助を廃止したため、逆に補助額が減り、賃上げにつながっていない園が少なくありません。小池知事も給料アップが必要で、処遇改善も進めなければと発言していることに照らせば、さらなる支援を都に求めるべきです。2点お答えください。
確かに、この間保育の需要は大幅に増えています。しかし、GDPに対する就学前の保育と幼児教育への公的支出の割合は、日本で言えば約0.45%であり、OECD諸国平均の6割に過ぎません。
保育の量と質を向上させるために予算を大幅に増やすことをためらってはいけません。国や都に必要な支援を求めるとともに、区としても安上がりな詰め込みなどの規制緩和による対策ではなく、保育の質を確保した認可保育園を軸として、当面就学前人口の50%まで増やすなど目標をもって増設することを求めます。ご答弁ください。
【堀こども家庭部長】
区では、待機児童を解消するため、今年度保育所待機児童ゼロ作戦を展開し、現段階で計画どおり1000人を超える定員枠を確保しました。
利用申し込み数は、転園希望者も含め、全体で5,130件であり、昨年度に比べ511件増加しています。1000人の定員枠拡大により、需要数は充足されていますが、待機児童を確定するには、年度末の転出や認証保育所の入園状況等も把握しなければならず、未だ流動的な要素が残っており、引き続き、これらの把握に努めます。
新年度予算案における保育施設整備経費は、利用申し込み数のさらなる増加への対応とともに、今後、利用者がサービスを選択できる状況を整えるため計上したものです。
小規模保育事業の定員枠は、国の待機児童の緊急対策を踏まえ、上限定員19人を最大22人までとしましたが、面積や保育士配置の基準については、現行の基準を遵守しており、詰め込みとのご指摘はあたりません。
同じく、ゼロ作戦における既存施設の定員枠拡大においても、全ての施設において、現行の基準を遵守しています。
保育ニーズへの対応は、認可保育所だけで行うものではありません。歴史的にも大都市特有の保育ニーズに応えるため、認証保育所や保育ママなどは、民間事業者が立ち上げ、運営してきた制度であります。また、子ども子育て支援法に基づき創設された、小規模保育や事業所内保育なども地域型保育事業として、児童福祉法にも位置づけられています。加えて、区では練馬こども園を創設し、拡大に取り組んでいます。こうした多様なサービスを提供し、ご家庭の状況に合った選択できる環境を整えています。
次に東京都の補助金についてです。
平成27年度のこども・子育て支援新制度の開始に伴い、都は、社会福祉法人に対するサービス推進費補助金を廃止する一方、新たに保育士等キャリアアップ補助、保育サービス推進事業などを創設しました。併せて、私立保育園に支払う運営費なども増額されており、1施設当たりの支給額は、新制度開始前に比べ増額されています。これら補助金の実績報告書や巡回指導の際の賃金台帳等を通じて、給与の引き上げを確保しており、ご指摘はあたりません。
最後に、今後の保育需要に対しては、本年4月の保育所等の入園状況や、現在集計中の子ども・子育て支援に関するニーズ調査の結果も踏まえ、適切に取り組んでまいります。
次に国民健康保険についてお聴きします。
今回、議案として提出される予定の国民健康保険料の改定は、平均で前年比7,252円増、11万8441円と大幅に引き上げられました。その理由は、広域化にむけた高額療養費の保険参入に加え、一人あたりの医療費が大幅に伸びたことによるとしています。
国の政令改正で低所得者均等割軽減を行っていますが、それでも区の示したモデルケースで見るとほぼすべての世帯で値上げされており、生活が厳しい給与所得者年収200万円の2人世帯でも10,175円増の16万3127円。決して生活が豊かとは言えない給与所得者2人世帯で年収500万円でも23,815円増の39万4159円となっています。
あまりの上げ幅に区長会では決定できず、正副会長預かりという形でやっと決着しました。そして妥協策として来年度参入予定だった高額療養費の17/100を8/100に引き下げて対応しました。それでもこの5年の中で金額・率とも最高の上げ幅となっています。
しかも広域化については2018年度に予定通り実施するとしており、再来年度は今回、参入されなかった分を合わせて高額療養費が25/100一気にのしかかり、保険料がさらに増えることが予想されています。区長は23区区長会の役員会の一員であり、引き上げを決めた当事者として、こうした状況をどう受け止めていますか。お答えください。
この四年間で、保険料はおよそ2万円値上げされる一方で実質賃金が19万円も減り、年金も引き下げられ、消費税が増税されるなど区民生活が厳しさを増しています。練馬区でも滞納世帯は被保険者世帯全体の25%を超え、資格証発行世帯も滞納世帯の約12%、3480世帯と数・率ともに23区でトップレベルとなっています。区内のある医療機関では保険料が払えず、無保険状態がつづき、高血圧や糖尿病などの慢性疾患の薬を処方してもらうために2か月に一回全額自己負担で受診している人が複数いるといいます。
こうした状況の中でさすがに区長会でも12月に緊急要望書を国に対して提出し、「非常に厳しい保険料徴収の環境下に置かれるなど、保険者の努力だけでは解決しえない課題に直面している」と述べ、国の責任において財政基盤の強化と被保険者の負担軽減を求めています。区として国保の構造的な問題を解決するために真剣に取り組むとともに、国や都が動かなければ仕方なしとするのではなく、一般財源も投入した具体的な手立てを取るべきです。2点お答えください。
本来、区民の命と健康を守るべき国保制度が高い国保料で区民の生活を脅かしています。それを是正することなしに差押えなど取り立ての強化によって現状を打開するなどということは許されません。少なくとも国保法77条に基づく減免制度を区として積極的に周知するとともに制度自体も拡充すべきです。お答えください。
今後、安倍政権は、70歳以上の高額療養費の負担上限引き上げ、療養病床に入院する65歳以上の光熱水費の負担増などの医療制度の改悪を狙っています。こんなことをすればさらに必要な医療が受けられず、生活が困窮する人が増えるだけです。こうした改悪に区として反対すべきです。答弁を求めます。
【唐澤区民部長】
今回の区長会の判断は、国民健康保険制度の広域化を考慮したうえで、保険料の大幅な上昇を緩和するためのものであります。
次に、一般会計からの繰入についてであります。保険料軽減のため、区は毎年度繰入を行っており、平成27年度においては総額104億円の繰入のうち法定外繰入が60億円に上っています。保険者としての責務は、区民負担の公平性を確保するとともに、医療費の適正化を更に推進していくことであると考えています。そのため、ジェネリック医薬品の利用促進、糖尿病重症化予防事業等に取り組んでいるところです。併せて、保険者の努力だけでは解決し得ない課題については、国や都に必要な要請を行っていきます。
次に、保険料の減免については、国民健康保険法第77条に基づき、区の国民健康保険条例第24条において、災害や傷病など特別な事情によって、一時的に保険料の納付が困難な場合には、保険料を減額または免除できると定めています。特別区においては、共通基準に基づいて統一的な運営を行っていることから、更なる減免拡充を区単独で行うことは困難です。国保のしおり、区報、ホームページを活用し、減免制度の周知を行っております。個別の事情については、相談を通じて丁寧に伺うよう努めているところです。
また、医療費に適切な応能・応益負担を求めることは合理的であり、改悪とのご指摘は当たらないものと考えております。
次に介護保険について伺います。
第1は利用者負担についてです。
介護保険は、一昨年8月から単身者で年収280万円以上の人の利用料が2割に引き上げられました。これ以降、負担の重さから介護を抑制する事態が起こっています。ケアマネージャーから示されたケアプランでは「生活が維持できない」として週2回のデイサービスを1回にしたり、福祉用具をやめたりする利用者が増えていることが私たちの調査でわかりました。
負担能力による命と健康の格差は放置できません。区はこの現状をどう考えているか、どう対処するのか、お聞かせください。
安倍政権はさらに利用料3割負担の導入やケアプラン作成を有料化し、現役世代にも総報酬割で負担を押し付けようとしています。暮らしの実態を踏まえず、社会保障費削減を狙った切り捨ては許せません。区として反対の声をあげるとともに、介護保険料、利用料などの負担軽減を拡充すべきです。答弁を求めます。
【中田高齢施策担当部長】
初めに、利用者負担についてです。
介護保険制度は、高齢者の介護を40歳以上の区民で支え合う社会保険制度です。区の介護給付費は、平成27年度は450億円となっており、制度が始まった平成12年度の121億円と比べて、15年間で約4倍になっています。平成27年度以降も高齢者数の伸びと同様に受給者数も伸びています。2割負担の方が介護サービスの利用を控えているという実態はありません。
低所得者の保険料や利用料については、一般財源を介護保険会計に繰り入れるなど、すでに負担軽減策を実施しており、その額は年々増加しています。
高齢者が安心して暮らすためには、負担能力に応じて一定の自己負担を求め、制度の持続可能性を確保することが必要です。国に利用者負担などの見直しを求める考えはありません。
第2は、特養ホームについてです。
特養ホームの待機者数はこの間全国的に減少しています。その原因は入所条件を原則要介護3以上に改悪したことや、自己負担の増加などが指摘されています。練馬区でも1年前は2200人にのぼっていた待機者が昨年12月現在1365人で、800人も減りました。
待たされた末に重症化し特養どころではなくなった人や、諦めてしまった人がいるのではないでしょうか。
この2年ほど特養ホームが増えていないもとでなぜ減ったのか、理由を明らかにしていただきたい。
減ったとはいえ待機者は要介護5と4で770人、指数では11点以上の人が589人で、増設が急がれることは変わりません。
来年度以降は4ヶ所で計327人分ほど新たに整備する計画です。これは前進ですが、10年間の平均では年1ヶ所程度にすぎないペースです。
都の2020年に向けた実行プランでは、国有地の活用に対する負担軽減策や、都営住宅の建て替えで生まれる用地の活用などが打ち出されています。
区内では上石神井団地や東大泉団地で建て替えが進められており、住民からも意見が出されています。都の施策も活用して特養ホーム増設を進め、少なくとも重度の方はゼロを目指すべきです。2018年度以降どのような目標をもって進めていくのか、お聞かせください。
第3は介護人材の確保についてです。区政改革計画では介護人材の育成と定着を進めるとして、求人採用アドバイザーの派遣や介護初任者研修への助成を実施しています。
さらに介護職員実務者研修受講料補助も開始すると発表しましたが、主任介護支援専門員の更新研修に対しては助成がありません。助成に加えていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
同時に人材確保のカギは低賃金や厳しい労働環境の改善であり、これなしに職員が定着する保障はありません。
区内では395ヶ所、84%の事業所で処遇改善加算の実績があるとのことですが、これも全産業平均と比較すればまだまだ不十分です。この間介護報酬本体の引き下げが収入減を招き、事業者が自力で賃金を上げるには困難を伴います。
区として介護職の改善、定着に資する事業者支援の手立てをとること、国に対し介護報酬の引き上げを訴えることを強く求めます。
区の介護関連を含む福祉医療の新規充実予算は7億円に過ぎず、都市整備費の60億円と比べてあまりに貧弱です。こうした予算の使い方を改めれば可能と考えます。
【中田高齢施策担当部長】
前川区長の就任時、特別養護老人ホームの待機者は、2,511人でしたが、現在は1,365人と半減しています。
区は、これまで特別養護老人ホームの整備を進めてきたことに加え、24時間体制で在宅生活を支援する地域密着型サービスの整備に取り組んできました。また、近年は、民間事業者が整備する介護付有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅など入居系サービスも増えています。両者が相まって、高齢者は、特別養護老人ホームに加えて、多様なサービスの選択も可能となり、待機者数は減少しています。なお、区長就任時から要介護3以上の待機者は、699人減少しており、入所要件の変更が待機者減少の主な要因ではありません。また、自己負担の上昇により、待機者が減少したとの指摘はあたりません。
特別養護老人ホームの整備については、区は、土地の所有者を対象とした、土地活用セミナーを実施しています。また、都の補助制度も活用し、国有地での整備も進めています。
今後の整備数については、待機者の中には、入所の案内を行っても辞退する方がいることから、待機者の実態調査を踏まえ、第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画の中で定めてまいります。
次に、介護人材の育成と確保についてです。
主任ケアマネジャーの資格更新研修への助成については、来年度から実施する準備をすでに進めていきます。さらに、介護施設における職場環境の改善に向けて、介護従事者の身体的な負担を軽減する介護支援用具を、区内150の施設に配布することとしています。
また、昨年8月、国に対し介護職員の処遇改善のための要望を行いました。今後も、事業者の取組を評価し、介護報酬に反映する仕組みの導入などを働きかけてまいります。
次に公共交通空白地域の改善について伺います。
高齢にともなう身体機能の低下や障害など様々な事情で車も自転車も利用できない人々にとって、公共交通は日常の移動を支えるものであり、それが不十分では自由に外出しづらくなります。そのため、公共交通とは自由に移動し社会に参加することを保障し、憲法で規定された「生存権」や「自由権」を担保するものに他なりません。そういった点からも、公共交通の充実・交通空白地域の解消は区の責務です。
これまでは練馬区は、2009年に「公共交通空白地域改善計画」を策定し、様々な取組を進めてきました。
その結果、みどりバス南大泉ルートの新設などにより空白地域が0.82㎢改善し、民間路線バスのルート変更で0.11㎢が解消しました。その一方で、民間バスの減便によって空白地域が新たに0.12㎢生まれ、結果的に空白地域が広がりました。
また、光が丘駅から桜台通りを通り区役所まで運行していた1路線や大泉学園駅から練馬駅を通過し新江古田駅に至る2路線など、これまで区民の日常の足となっていた路線バスの廃止や減便によって空白地域にならなくとも日常生活が不便になる地域が生じています。
「公共交通空白地域改善計画」を改定するにあたり、空白地域の改善だけではなく解消のための計画こそ求められています。区はこれまでの到達をどのように評価をしているのでしょうか。お答えください。
区は状況の変化に対応し、実態に即した計画への見直しが必要だとして「改善計画」の改定をするべく素案を公表しました。素案では実施が難しい改善策や実施に至っていない改善策の見直しとして、みどりバスの「30分1便」運行や乗合タクシー導入検討地域へのルート設定など、みどりバスによる改善が多くを占めています。
素案ではおおむね5年程度の短期改善策が実現すれば1.47㎢、空白地域の38%が解消するとしていますが、これまで空白地域の解消に向け様々な改善策を実施しながらも、バス事業者の経営上の判断による減便によって空白地域が拡大したことを考えれば、事業者の協力が不可欠です。
安易な路線廃止や縮小は空白地域の更なる拡大を招きかねません。バス事業者に対し区と共に区内の公共交通ネットワークを担う立場に立たせるとともに採算性にも配慮しながらも支援を行うべきです。区の考えを伺います。
空白地域の解消のためにはみどりバスの「30分1便」の実現が不可欠です。
これは、みどりバスの運行開始時からの目標であり、利用者への実態把握調査でも最も望まれています。しかし、区は車両購入費など費用負担増を課題として大泉ルート以外では実現していません。もし増便により利便性が向上し、利用者が増えれば、区の費用負担の圧縮にもつながるのではないでしょうか。
区は「広報戦略」にこの3年間で約1億6000万円を投入しています。こうしたお金こそ精査し、早期に全ルートでの「30分1便」運行を実現すべきです。
また「30分1便」運行を実現するうえで、現在の長大なルートが障害となっています。みどりバスは、前身となる運行路線が空白地域の解消のみを目的としていなかったことから、空白地域の解消と結びつかない区間も走行するなど、ルートがいびつで長大になってしまいました。
そのため増便するには多くの車両と運転手が必要となり、より多くの経費がかかります。
素案では氷川台ルートの系統分離や重複区間などの見直しを改善策に挙げていますが、その他のルートについても大江戸線の延伸など状況の変化を踏まえ、駅を起点に空白地域を通過する循環型の路線に、利用者へ配慮しながら見直すべきではないでしょうか。2点お答えください。
以上で日本共産党練馬区議団を代表しての一般質問を終わります。
【黒田副区長】
区はこれまで、平成21年に策定した公共交通空白地域改善計画に基づき、区内の交通環境の改善に努めてきました。一方で、改善が進んでいない地域も存在しており、これらは都市計画道路の整備の遅れや、狭隘な道路が多いことが要員であると考えております。
今後は、高齢化率の特に高い地域や、坂道に配慮したみどりバスの停留所増設、都市計画道路の整備にあわせた路線バスの運行ルート再編などにより、利便性を高めていく必要があります。また、大江戸線の延伸などの状況に応じて、路線バスの再編が必要になることを考えており、現在、改善計画の見直しを進めております。昨年末には改定素案を公表し、先月20日まで、区民意見反映制度に基づく意見を募集し、区民の皆様からのご意見を頂きました。今年度末には、新たな計画を策定してまいります。
ご指摘を受けるまでもなく、空白地域の改善には路線バス事業者との協力が不可欠であります。引き続き、バス事業者との情報交換を密にして、バス路線の状況に注視するとともに、互いの役割を踏まえながら、利便性の高い公共交通ネットワークを築いてまいります。
みどりバス事業については、あくまで路線バスを補完し、公共交通空白地域の改善を目的として実施している事業です。バスの増便やルート再編などの取り組みを行う際には、必ず費用負担を伴います。そのため、利用に応じた区の負担に配慮しながら、事業を進めていかなければなりません。また、改善計画の内容を着実に進めていくには、地域の理解はもとより、バス事業者の体制や事業費などを勘案し、連携して取り組む必要もあります。
新たな改善計画では、大江戸線の延伸による新駅を起点とした路線バスの再編や、道路整備の進捗にあわせた路線バスのルート変更などによる、公共交通空白地域の改善についても検討することとしています。
今後も、事業の進捗状況を踏まえながら、改善計画に示した内容の実現に努めてまいります。