2016年第1回定例会一般質問/2016年2月9日/やくし辰哉 【やくし辰哉議員】
日本共産党練馬区議団を代表して一般質問を行います。
質問に先立ち、一言申し上げます。2月7日に北朝鮮が行った事実上の弾道ミサイルの発射は、国連安保理決議に違反するとともに、6カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反する暴挙に他なりません。
日本共産党は北朝鮮の行為を厳しく非難し、抗議するとともに、国際社会が一致して政治的外交的努力を強め、核兵器・ミサイルを放棄させるための実効ある措置をとることを強く求めます。
それでは質問に移ります。始めに区長の基本姿勢として、第一に、立憲主義についての認識を伺います。
この間の定例会において党区議団は区長に対し、安保法制に関する姿勢を質してきました。
しかし、区は「国会の動向を注視していく」と法案の審議中は明確な言明を避け、9月の強行採決されたのちの第4回定例会では、「平和安全法制は国会で憲法解釈も含め審議された結果、可決・成立したもの」と述べ、「公務員の憲法尊重擁護義務に反するものではないと考える」と答弁しました。
言うまでもなく、立憲主義はどんなに多数を持っている政権であっても、憲法の枠の中で政治を行うことであり、憲法に反する決定はできないとする近代政治の根本原則です。
にも関わらず、安倍政権は一昨年の「閣議決定」で、戦後半世紀以上にわたって歴代政府が「憲法9条のもと集団的自衛権は行使できない」としてきた憲法解釈を、「行使できる」と180度転換してしまいました。そのもとで、自衛隊が海外での武力行使に乗り出すための法律がこの戦争法であり、憲法9条を破壊する違憲立法そのものです。
昨年6月の衆議院憲法審査会では3人の憲法学者が揃って「安保法制は違憲だ」と発言するなど、憲法学者や法曹関係者のほとんどが違憲と判断し批判しています。また、「戦争法反対」「憲法守れ」と国会周辺で、全国津々浦々でこれまでにないたくさんの人たちが声を上げ、立ち上がりました。過半数の国民が憲法違反と反対しているのです。
「違憲か合憲か」ははっきり勝負がついている法律を無理やり通すというのは、立憲主義、法的安定性、法の支配を根底から覆すものであり、このままでは無法国家となる重大事態です。先の区の答弁は、安倍政権が進めてきた憲法違反の立法を肯定し容認するものであり、断じて許すことはできません。
区長は、行政の長として、いま戦争法が強行された日本の政治が立憲主義を覆す重大な事態であるという認識があるかどうか、答弁を求めます。
【横野総務部長】
平和安全法制は、平和主義を堅持しながら、我が国そして国際社会の平和と安全をどうやって守るか、そのためにどのような安全保障の仕組みが必要かなどについての審議を経て成立したものです。
憲法や憲法の下にある国会法の手続きに従って、憲法解釈も含め審議された結果、可決・成立した法律であり、立憲主義に反するとの認識は持っておりません。
【やくし辰哉議員】
基本姿勢の第二として、区政改革についてお聞きします。
「練馬区の『これから』を考える~区政改革に向けた資料」では「みどりの風吹くまちビジョン」で掲げた政策を実現するために具体的な仕組みや態勢を見直そうと述べていますが、その見直しの必要性として、人口減少・少子化や高齢化社会の到来をあげています。確かに少子化問題は日本社会の基盤を揺るがす重大問題であり、高齢化社会をどう支えるかという問題も21世紀の重要課題ですが、少子化問題や高齢化社会の到来の事実を指摘するだけでは不十分と言えます。
少子化は、長時間・低賃金・非正規労働者の拡大など働くルールを破壊し、保育制度の改悪など子育てへの障害を作り出した自民党政治が進行させてきたのです。少子化問題を言うなら、そうした原因を取り除く対策がなくてはなりません。高齢化社会を迎えて重要なことは、老後の不安のない社会をいかにつくるかということです。年金、介護、医療などをどう充実させていくかが重要です。
区政改革の前提となる現状をどう捉えるか、お答え下さい。
また「資料」は、「新しい成熟社会」と位置づけ、区民サービスを「持続可能な仕組み」に変革する必要性を強調し、施策の優先度・コストと効果のバランス・受益と負担・効率性の観点からサービスを見直すこととしています。
具体的に施策の内容を見ると、子ども・子育て支援では、まず小学校入学前の保育・教育サービスの利用者数が5年前と比べて3,300人増え、その結果、経費が150億円増加した。だから区立保育園や学童クラブのさらなる民間委託を進め、持続可能なサービスができるように適正なコスト負担を検討するとしています。
しかし、利用者数が増えたのは、共働き家庭や女性の社会進出の増加が原因であり、それはなんら悪いことではありません。区の歳入増加にとってもいいことです。「練馬子ども園」や保育園の民間委託は、本来自治体の責務である保育実施義務の放棄と言わざるをえません。
子どもの医療では、「全国の自治体では、練馬区と同様に所得制限や自己負担なしで医療費助成を行う市区町村が増加傾向にあります」として、「資料」では所得に応じた値上げや所得制限が示唆していますが、子どもたちのためにこういった貴重な制度を維持すべきです。
超高齢化社会の対応では、介護予防や在宅療養ネットワーク、ひとり暮らしの高齢者への見守り体制の強化等を課題にあげていますが、区民の切実な介護要求にどう応えるか、はまともに論じていません。それどころか、現在の高齢者向けサービスを続ければ今後10年間で約1億5000万円、約45%増になると強調したうえで、高齢者向けの給付事業やサービスを受益者負担の観点からの見直しをすると言い、結局、財政難を理由に区民への負担増、行政サービスの低下を求めているにすぎません。区の役割を後退させるべきではありません。そのためには区の予算全体を見直すことです。お答えください。
増加している公共のみどりの割合の今後の目標があるのか、明らかにすべきです。計画実現にかかる費用総額もお示し下さい。適切な計画こそ求められています。
都市計画道路は整備率の低さを理由に5年間で6割、10年間に8割の整備率にするとしています。交通事故の危険性や円滑な消防活動への支障をなくすためと言いますが、必然性、緊急性は希薄といわなければなりません。区の財政状況と勘案して、計画を練り直すべきです。
しかも、都市計画道路の整備費用について「資料」では、「残りの区が支出する経費についても特別区財政調整交付金の対象となり、財政が確保される仕組みになっています」と、とりようによっては区に負担はなく、あたかも特別区財政調整交付金が都市計画道路の整備費用のためにあるものだと誤解を招きかねない記述となっています。
特別区財政調整交付金はあくまで一般財源であり、そのことを明記するとともに、道路を特別扱いせず、福祉など本当に区民が必要なところに予算を振り分けるべきです。
総じて区の発表した資料は、少子化・高齢化、人口減少、区立施設の経費の増大を口実に区民負担増と行政サービスの切り下げを指向しており、区民をそうした方向へ誘導するものになっています。安倍政権が社会保障のあらゆる分野で制度改悪・削減に乗り出しているとき、国の悪政を持ち込み住民に負担を強いるのでなく、住民を守る立場に立った施策をどう進めるかの探求こそが求められています。答弁を求めます。
【前川区長】
12月に公表した区政改革の資料では、少子化や高齢化、公共施設の更新が今後の区政にとって特に重要な課題であることを、データに基づき示しています。区政改革の究極の目標は、区民サービスの向上です。それと持続可能性の確保をどう両立させるかが課題であります。
ただ今ご質問を聞かせていただきましたが、「超」超高齢化社会が否応なく迫るなか、どうすれば区民サービスを充実できるのか、また持続可能性を確保できるのか、一般論ではなく具体的にお示しをいただきたいと思います。
少し変わってきたかなぁという感じもありますが、残念ながら、未だ始めから議論の図式が決まっていて、それに無理やり事実を恣意的に当てはめているという印象を受けます。例えば、「区民負担増と行政サービスの切り下げを指向している」「まちづくりを重視し、区民の深刻な実態に応えない」、そういった批判の仕方はいかがなものでしょうか。練馬区の実態を踏まえて堂々たる政策論を展開していただきたい、そう切に願っています。
【森田区政改革担当部長】
私から、区政改革の資料についてお答えします。
練馬区では、高齢化が急速に進行しつつあり、今後高齢者人口が激増して膨大な医療・介護需要への対応が迫られることになります。一方、子どもの人口は近年、ほぼ横ばいで推移し、現状では必ずしも少子化が進行している状況にはありませんが、保育ニーズの増大など、子育て支援の更なる充実が求められています。
少子高齢化が進む中、時代の状況と地域の実態に即した、質の高い区民サービスを提供できる、持続可能な仕組みに変革していく必要があります。区政改革に向けた資料には、このような区の現状認識をデータに基づいてお示ししていますので、ぜひよくお読みいただきたいと思います。
お話の少子化は、我が国の経済や労働、国民意識の変化など、様々な要因が関係しており、特定の政策に起因するものとは考えていません。
また、区民ニーズに応えるため、練馬こども園や保育サービスの充実に民間と力を合わせて取り組むことが、なぜ保育実施義務の放棄になるのでしょうか。こども医療費助成制度は、多様な意見を紹介して今後のあり方を問いかけているだけで値上げ等を示唆しているものではありません。
超高齢社会への対応では、医療や介護の連携を踏まえた「地域包括ケアシステム」の確立に向けた課題を取り挙げています。お話では「介護については、まともに論じていない」とのことですが、地域包括ケアシステムの確立に向けた取組は、当然ながら、介護の課題に対応するものであります。
平成28年度当初予算案は、区民ニーズを踏まえて、医療・福祉や子ども・教育に関する経費が大きな割合を占めるものとなっています。予算を見直すべきとするご指摘は全くあたらないものであります。私からは以上です。
【内木環境部長】
私から、公共のみどりについてお答えいたします。
区民が実感できるみどり豊かなまちづくりをさらに進めるために、みどりの総量だけではなく質にも着手した、新しい視点での調査を実施し、28年度にみどり施策の新たな考え方をまとめます。
公園や街路樹、区立施設などの公共のみどりが目指す目標ならびに事業費については、この新たな考え方に基づき、計画年次を定めた上でお示ししていく予定であります。以上であります。
【やくし辰哉議員】
次に予算についてです。
今、安倍政権のもとで、財界・大企業は利益を増やす一方、消費税8%増税による深刻な消費不況、実質賃金の連続的低下、年金削減や医療、介護の切り下げ・負担増、生活保護の切り下げなどにより、区民の生活はますます厳しくなっています。
こうした中で、とりわけ高齢者や子ども、障害者、低所得者など「社会的弱者」、商店などの営業は深刻な影響が出ています。その一部は、心中や虐待、孤立死など痛ましい事件として、また何代も続けてきた商売を続けられず閉店に追い込まれるなど問題が吹き出しつつあります。そしてまだ見えない多くの深刻な現状は放置され、行政の手による支援を求める切実な声が高まっています。この現状に今度の練馬区予算が答えるものになっているでしょうか。
第一は歳入の問題です。発表された2016年の都区財政調整フレーム案では、財調交付金総額は前年度比0.1%、9,756億円の増額となり、財調交付金の原資である法人住民税の一部国税化で減額分を上回る見通しが示されています。ところが、練馬区の一般会計予算歳入の特別区交付金は28億8,430万円の減額となっています。特別区民税が前年比で4億5500万円の増額であることや昨年も法人住民税の一部国税化の影響を受けた上で財調が増額算定されたことなどと比べても低く見積もりすぎているのではないかと考えますが、その理由と今後の見通しをお示しください。
第二は歳出の問題です。
産業経済費では、景気対策予算が期待されていますが、予算に占める構成比では横ばいの0.9%。区民費でも昨年比‐3.7%でその主な減額に国民健康保険事業会計繰り出し金‐5億2,600万円がありますが、来年度も国保料の引き上げが必至な中で保険料の引き下げに充てることはできなかったのかが問われます。
保健福祉費は、昨年比9.3%の増額ではありますが、その主なものとしては医療基金の創設など積極面はあるものの、住民合意のない関越道高架下の高齢者センターを除けば、社会保障費の自然増分だけです。子ども家庭費では、昨年比5.2%増額し、アクションプランに従って認可保育園の増設の予算は組まれておりますが、来年度の申し込み状況から考えれば、今年も認可保育園に入れない子どもたちは1,000人を超えます。
その一方で、都市整備費10.5%、土木費46.7%の増額となり、住民合意のない都市計画道路補助135号線や232号線などを推進し、大江戸線延伸基金にはさらに10億円も積み増し、公園も単年度でこれだけ多くの整備が必要なのかなど、まちづくり予算を重視し、区民の深刻な実態に応える予算と言えるのか疑問です。
区は、区民の実態をどのように把握し、今度の予算でどう対応しようとしているか、私どもが指摘したいくつかの点に関わって具体的にお答えください。
【中村企画部長】
財政調整交付金が減額となっているのは、法人住民税の一部国税化の影響に加え、財政調整交付金の算定において練馬区固有の需要額が落ち込むことによります。具体的には、事業を実施した翌年度に実学で算定される、まちづくり事業費が減少しているためであります。財調交付金の今後の見通しについては、法人住民税の国税化拡大により、引き続きマイナス傾向となると見込んでいます。歳出総額2,600億円のうち福祉・医療や子ども・教育に関する経費を1,700億円、全体の65%としました。子ども・高齢者・障害者などの分野では、新規事業も積極的に予算化しています。
また、経済対策として、区内中小企業向け工事費の増額や商店支援の新たな事業費も計上したところです。生活困窮者対策として、自立相談支援事業、就労サポート事業、子どもの居場所づくり事業費なども計上しました。
一方で、まちづくり事業は、210億円、そのうち道路整備の経費は40億円、全体の1.5%となっています。
予算編成にあたっては、議会はもとより様々な施設やサービスの利用者、関係団体等からの意見・要望を不断に聴取したうえで、区民サービスの充実を図ることを基本として編成しています。従いまして、自治体の責務を放棄しているとか、まちづくり予算を重視し、区民の深刻な実態に応える予算と言えないとのご指摘は、まったく当たらないものであります。
【やくし辰哉議員】
次にまちづくりについてお訊きします。
東京都と各区市は、昨年12月末に今後10年間に整備すべき都市計画道路をまとめた「東京都における都市計画道路の整備方針~第4次事業化計画(案)」を発表しました。そこでは、それぞれの路線について15項目にわたり、その必要性を検証しています。しかし、検証項目が曖昧なうえ一項目でも当てはまれば必要性ありとされてしまうため、見直し候補区間はわずか9区間、4.9kmで、全体の0.4%しかありません。まさに整備先にありきの検証といえます。
その結果、練馬ではすべての路線が必要性ありとされ、うち13路線・21区間が優先整備路線に認定されました。その中には、石神井公園駅から西に延びる補助232号線があります。232号線は、それとほぼ並行して、富士街道と156号線が走っています。この2本の道路は拡幅も検討されており、こうした既存の道路を使えば交通アクセス上問題はありません。しかも計画線上には現道がなく、道路整備によって閑静な住宅地やコミュニティーが破壊され、中学校を分断します。あえて教育環境を破壊してまで道路を造る合理性がどこにあるのでしょうか。区は、大泉第二中学校について、有識者会議を設置し検討するとしていますが、これは道路整備ありきの検討であり、区民が求めるものとなっていません。
外環の2、135号線、230号線の南北道路3本を通す意味があるのかも疑問です。外環の2については、練馬以南の自治体で廃止も含めて話し合いが行われており、練馬区部分だけを優先整備路線に指定することは、それ以外の区間にも道路を押し付けるものです。
その他、補助133号線や172号線、放射35号線などの住宅地や商店街、みどりを破壊する路線が次々優先整備路線に指定されました。こうした問題のある路線については優先整備路線から外し、廃止も含めしっかりした検証を行うべきです。答弁を求めます。
区長は所信表明で、防災や救急、みどりなどの観点から都市計画道路の整備の必要性を強調していますが、道路でなければ解決できない課題は少なく、防災で言えば建物の耐震化や感震ブレーカーの設置こそ必要で、むしろ道路整備による地域コミュニティーの破壊が防災力を弱めることにつながります。
渋滞の解消についても東京都が信号機や局所改修などで渋滞を解消するハイパースムーズ作戦を検討しており、こうした対策を優先して行うべきです。答弁を求めます。
そもそもまちづくりは、予算も含め住民と一緒に作り上げていくものです。ところがこの間のまちづくりは大資本や大型開発が優先され、整備率ありきで道路が押し付けられてきました。協議会は形骸化し、住民説明会やパブリックコメントも住民の声を聴くのではなく、一方的な行政の考えを押し付けるセレモニーとなっています。
今こそ道路優先のまちづくりを改め、住民本位のまちづくりに転換すべきです。答弁を求めます。
【前川区長】
阪神淡路大震災では、戦災復興区画整理が行われなかった地区で、道路が狭隘なまま広い幅員の道路整備が遅れていたため、火災が焼け止まることなく多くの犠牲者が出ました。道路の整備が防災力を弱めるというお話ですが実情はまったく逆であり、私には理解できません。
近い将来必ず来る都市直下型地震の脅威から区民の生命や財産を守ることは、行政に課せられた責務であり、道路整備の必要性は明らかであります。平時においても交通渋滞を解消し交通の円滑化を図るには、骨格となる道路が不足する練馬区において、道路のネットワーク化が不可欠であります。
今年度末までに、都市計画道路の整備方針を策定し、その方針に従って、都市計画道路の整備を着実に推進してまいります。
【宮下技監】
昨年末に公表した東京における都市計画道路の整備方針(案)の策定に際しては、有識者の意見も聞きながら、改めて都市計画道路の必要性の検証を行った上で、優先整備路線の選定を行っています。
現在、パブリックコメントを実施中であり、頂いたご意見などを参考にしながら、今年度末までに整備方針を策定していきます。
都市計画道路は、自動車交通の円滑化に加え、安全な歩行空間の確保や豊かな緑の創出など、区民の日常生活を支える都市インフラであります。
良好な都市環境を後世に残していくためにも、地域の方々と沿道まちづくりの協議を行いながら、都市計画道路の整備を進めてまいります。
【やくし辰哉議員】
次に、地域包括ケアシステムに関連して伺います。
区内の高齢者人口は約152,000人、10年後には16万人を超えると予測されています。高齢化への対応は区政の重要課題です。
地域包括ケアシステムは、高齢者が地域で暮らし続けられるよう医療や介護を一体的に提供するものとされています。しかし、国の政策はこれに逆行してばかりです。医療では、政府予算案で診療報酬が1%超の削減です。介護では介護報酬の削減が事業所を圧迫し、各地で閉鎖・廃業が増加し、人材確保も困難にしています。練馬区内の事業所も「事業を成り立たせるのがやっと」、「報酬上げてもらわないと潰れる。そのとき利用者はどこへ行ったらいいのか」という悲痛な声をあげています。賃金が低いために職員不足のところも多数です。
安倍政権が掲げる介護離職ゼロも、現状を打開するものではなく、事業所が安定・継続しなければ介護制度は成り立ちません。介護報酬削減が区内事業者にどう影響しているか、職員給与の水準なども含め実態を調査するべきと考えますが、いかがでしょうか。
また区長は所信表明で「地域包括ケアシステムの確立が必要」と述べましたが、このままでは絵に描いた餅になりかねません。政府に対し、医療・介護に係わる改悪をやめるよう区として強く求めるべきではありませんか。2点、お答えください。
あるべき地域包括ケアシステムは、お金のあるなしに関わらず必要な医療・介護が受けられる無差別・平等のシステムです。しかし、国が推進する本当の狙いは、増大する社会保障費を削減して、安上がりのシステムを構築することにあります。大事なことは練馬区が、そうした国の狙いに関わらず、高齢者の尊厳と人間らしい暮らしを守る責任を果たすことです。
その要となる、地域包括支援センターについて伺います。
現在、地域包括支援センター各圏域いずれも高齢者世帯の半数は75歳以上です。こうした中で、役割が大きくなっています。
今の人員体制は、本所は事務を除いて8~10名、支所は4~6名ですが、センターへの相談件数が増加しており、さらに基本チェックリストや介護保険請求の事務など、目の前の仕事に追われています。虐待事案は事後の追跡や支援も含め常時40件ほど抱えているなど職員は目いっぱいです。地域のネットワークづくりなどの仕事には、手が回せないのが実情です。
この状況を打開し、職員が機敏に動ける環境をつくることが必要です。現場関係者からは「今やらなければ、深刻な事態を招く」という声があがっています。高齢者の増加に合わせ、地域包括支援センター本所も支所も実態に即して人員の確保・体制強化をはかるべきです。答弁を求めます。
昨年、練馬を除く本所3ヶ所が委託されました。総合支援事業の開始が重なり、当初は大混乱しました。現在は幾分落ち着いたようですが、関係者からは「支所に対する援助が後退している、早い対応ができなくなっている」こと、「特に虐待事例でそれが顕著だ」という声があがっています。
虐待問題は、一刻も早い対応が必要ですが、それには区の関与が欠かせません。虐待事実の確認・認定、支援の実施など、各段階で区と支援センターとの連携を厚くすることです。委託前の昨年3月に区は、「しっかりと連携を密にしていく」と答弁していますが、現場の実態はどうなのか、また委託そのものに問題がなかったのか、フラットな立場で検証が必要ではないでしょうか。お答えください。
【古橋高齢施策担当部長】
介護報酬は、国が介護サービス事業者の経営状況の実態を調査し、この結果を踏まえて3年ごとに見直し改定するものです。平成27年度の改定で基本報酬は減額となった一方で、事業者の様々な取り組みを評価し、介護報酬に加算して算定できる仕組みとなっています。介護や医療の報酬改定は、国の責任で行われるものであり、区として、実態調査を行う考えはありません。
次に、国が行う介護保険制度の改正は、高齢化の更なる進展に対応し、持続可能な仕組みとするために必要なものであり、見直しを求める考えはありません。
次に、地域包括支援センターについてです。
昨年4月、地域包括支援センター本所のうち、練馬を除いた石神井・光が丘・大泉の運営を委託し、主任ケアマネージャーを1名から2名に増員しました。また、医療・介護連携推進員を、それぞれ1名ずつ増員しました。各支所についても、総合事業の開始に合わせて、今年度からケアマネージャーを1名ないし2名増員しました。現在、本所・支所とも、必要な人員を確保し、適切な運営を行っています。委託によって、本所3か所の対応が低下したというご指摘は当りません。
高齢者虐待の対応では、本所は通報の受付、事実の確認など、総合福祉事務所は虐待の認定や入所措置などを行い、常に連携を取りながら、それぞれの役割を果たしています。
現在、地域包括支援センター運営協議会において、第三者評価の仕組みを検討しています。来年度から、その評価を活用し、引き続き、地域包括支援センターが適正に運営されるよう努めてまいります。
【やくし辰哉議員】
次に、地域包括ケア病棟についてです。昨年4月から、大泉生協病院で地域包括ケア病棟が導入されました。カンファレンスをしながら在宅療養・介護へスムーズに移行できるということで、患者・病院・介護者相互にメリットとなっています。病床の稼働率もよく、収益も改善しているということです。光が丘病院改築を巡っても当該病棟について議論されていますが、介護関係者は「ぜひ区内各所に作ってほしい」と希望しています。今後病床増を目指すなかで地域包括ケア病棟を位置づけていただきたいと思いますが、現段階での区の考えをお聞かせください。
【新山地域医療担当部長】
急性期を脱した患者が在宅療養に移行するためには、入院を継続しながら在宅復帰に向けての訓練や帰宅準備を整える必要があることから、地域包括ケア病棟は重要な役割を担うと考えています。
そのため、練馬光が丘病院の建て替えにあたっても、急性期の機能に加えて、地域包括ケア病棟の整備も視野に入れて検討を進めています。
このたび創設した支援制度においても、地域包括ケア病棟を対象として、利子補給や設備整備の補助を行うこととしております。
【やくし辰哉議員】
次に中途障害者支援事業について伺います。
中村橋福祉センターは開設3年目を迎えますが、利用状況は定員を大きく下回ったままで、半分はおろか、利用者がたった一人の日もあるなど、有効に利用されているとは言えない状況が続いています。
そもそも、練馬区の高次脳機能障害者支援については長い期間、その不足が指摘されてきました。このため2010年に「高次脳機能障害者と支援者の会」から、リハビリテーションと日中活動の場を求める陳情と6,000筆を超える署名が提出され、障害者計画懇談会では、家族から日々の壮絶な介護実態や、通所先を求める悲痛な訴えが報告されました。
2012年から始まった中途障害者支援事業は、このような区民の要望に応えるために立ち上げられ、特に中村橋福祉ケアセンターは、高次脳機能障害の専門的リハビリテーションを提供する施設として、当事者、家族の強い期待のなか開設されました。にもかかわらず、低い利用状況が続いているのは、今でも区民が利用しにくい実態があるのではないでしょうか。
この点について昨年の定例会でのわが党の質問に対し区は、週の利用日数と利用期間は原則であり利用要件ではない、総合支援法の規定及びそれぞれの障害等の状況に応じて適切に判断する旨を答弁しました。また、私どもがセンターを訪ねた際も「断ったことは一度もない」とお答えになっています。
しかし、実際区内の高次脳機能障害を専門とするクリニックや医療機関、施設などに問い合わせたところ、介護保険のデイサービスを利用していること理由に福祉ケアセンターの利用を断られた人や、通所できる回数がたった2回と少ないためにやむなく利用を諦めた人が何人もいることがわかりました。状況に応じてなどと言いながら、結局厳しい利用要件が利用を制限しているのではありませんか。
障害者総合支援法では、「介護保険の機能訓練」と「支援法の機能訓練」との併用はできないと規定されているだけで、利用回数についての制限もありません。しかも2012年には厚労省から機能訓練と生活訓練の併用を認める旨の通知がでています。にもかかわらず支援法をはるかに超える厳しい原則を設定したのはなぜでしょうか。
介護保険と支援法の両者を併用することで、重い脳血管障害の方などは、リハビリと介護の両方を受けながら、家族の負担も軽減され回復の道を歩んでいけます。
利用者要件原則の即時撤廃と、それを区民に広く周知することが必要です。お答え下さい。
さらに練馬区で唯一の中途障害者通所訓練事業を充実させるためには、高次脳機能障害の特性について関係者の理解をさらに広げることが必要です。特にケアマネージャーに対し障害の特性を学ぶ機会を設けるよう求めます。同時に急性期・回復期病院にセンターの存在を知らせることが重要です。2点お答え下さい。
【大羽福祉部長】
当事業については、高次脳機能障害等の中途障害の区民で、通所により機能を回復し社会復帰を目指す方に、利用していただいています。
昨年の第二回定例会の一般質問においてもお答えしましたとおり、受け入れを断ることはなく、全ての希望者に対応しており、当事業の利用者が少なく、有効に利用されていないとのご批判は当たりません。
介護保険と障害者総合支援法の双方が適用される方については、法の規定に従い、原則として、同種のサービスがある場合は介護保険に定めるサービスを優先する必要があります。
生活訓練については、介護保険にはないサービスであることから、事業案内の中で、併用は可能である旨を丁寧にご説明しています。
利用日数は利用に当たっての要件ではありません。利用日数については、週2日に限定することなく利用者の障害の状況等を考慮して、理学療法士や作業療法士などの専門職が個々に判断しており、ご相談の中で丁寧に説明しています。
利用要件が厳しく、区民が利用しにくい実態があるとのご批判も当たりません。
高次脳機能障害や当事業についての理解を広げるため、ケアマネージャーに対して事業説明や啓発研修を実施しております。病院に対しては、病院関係者が出席する会議や病院等を訪ね、事業説明を行っています。
【やくし辰哉議員】
最後に、産業振興について伺います。
区内事業所の91.4%は従業員19人以下の小規模事業所が占めています。また、小規模企業が事業を継続することは、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持だけでなく、地域での見守り活動や防犯などコミュニティーを支える役割を担っている点からも大きな価値があります。産業振興にあたっては小規模事業者をどのように支援していくかが要になります。
区長は所信表明で「夢なき者に成功なし」という言葉を紹介しました。しかし、本来すべての事業者は自らの仕事に誇りと夢を持ち利益を出すことを目指しています。にもかかわらず、規制緩和による大型店の出店や消費税増税による消費の冷え込みなどの経営環境の悪化が夢を奪い事業を継続することさえ困難な状況を生み出しています。
ところが、発表された「産業振興ビジョン素案」では、事業継続の重要性は一切触れられていません。区長はこうした区内事業者の困難をどのように認識されているのでしょうか。お答えください。
そもそも区長は第三回定例会で産業振興ビジョンに「事業の持続的発展」を評価する小規模企業基本法の精神を活かすことを求めたわが党の質問に対し、「独立した中小企業者の自主的な努力が助長されること」という基本原則が異なる中小企業基本法の理念を持ち出し、区の方針と同じ認識としました。これでは区内小企業は救われません。真に小規模企業振興基本法を活かす立場に立つべきです。
「成長発展」を目指す場合も、「持続的発展」を目指す場合でも、事業者の努力が必要なのには変わりありません。「産業振興ビジョン」で小規模企業が事業を継続することの重要性を位置づけ、困難に直面する事業者のやる気を引き出し夢が持てるよう支援を行うべきです。答弁を求めます。
【市村産業経済部長】
事業を継続していくためには、事業者自ら創意工夫を凝らし、努力して収益力を高めていくことが重要であります。
区では、ビジネスサポートセンターにおいて、販路拡大や新商品開発など収益力向上に向けた支援を行うとともに、後継者不足に悩む事業者と起業者のマッチングに取り組んでまいりました。今後も自ら努力する事業者を支援してまいります。
なお、中小企業基本法の基本理念では「独立した中小企業の自主的な努力が助長されること」が明記されております。一方、小規模企業振興基本法は、第一条において「中小企業基本法の基本理念にのっとり、小規模企業振興について、その基本原則を定める」としており、基本原則が異なるとのご指摘は当りません。
【やくし辰哉議員】
事業者の継続的発展と区内経済の発展のためには、地域で仕事をつくることが必要です。 そうした中で全国各地の自治体では、地域で資金と仕事をまわし経済効果を発揮する住宅リフォーム助成制度が創設されています。
区は第4回定例会の一般質問でわが党がリフォーム助成の創設を求めたのに対して、「既に区が行っている事業に加え、リフォーム助成を行うことによる新たな需要の喚起は多くを見込めず、経済効果については限定的」と答弁を行いました。どのような検討を行った結果、経済効果が限定的と判断したか。お答えください。
【宮下技監】
住宅のリフォームは、建物の維持・向上の一環として、それぞれの家の老朽化の状況などに合わせ、必要な時期に行うものと考えています。
他の自治体の事例に見られる経費の一割程度の助成があることで、予定外のリフォームを行う方は少ないと考えています。
従って、助成制度があることによる新たな需要の喚起は限定的と考えているものであります。
【やくし辰哉議員】
産業振興ビジョンでは基本方針として、72万区民の活力を活かす、事業者の強化・連携の推進、まちづくりとの連動の3点を挙げています。しかし、区が想定する都市計画道路の整備や駅前再開発などと結んでの産業振興では地域の小規模企業の廃業と大型店やチェーン店の更なる出店を誘導しかねません。また、事業者間の連携の推進についても、これまで区が行ってきた企業連携による新商品の開発や後継者不足に悩む事業者と起業者のマッチングなどは実績がほとんど無く、検証が必要です。
こうした問題点を克服し、区の支援策を小規模事業者の願いに添ったものにするためには、経営上の困難や企業間連携を図る際の問題点を掴むことが重要です。そのために区内中小事業者へ悉皆調査を行うこと、産業ビジョン専門家委員会に小規模事業者や公募区民などを加えて、施策の実施状況など適時適切に評価・見直しを行うべきです。2点答弁を求めます。
【市村産業経済部長】
まちづくりの実施は、産業振興にとって大きなチャンスです。こうした機会を捉えて、事業者が自ら発展できるよう創意工夫を重ねることが重要であります。区では、主役は事業者という考え方に基づき、区内事業者の支援に努めてまいります。
産業振興ビジョン専門家委員会については、構成を変更する考えはありません。また、区内中小事業者への悉皆調査を実施する予定はありません。