練馬区長 前川燿男 殿

2014年8月8日
日本共産党練馬地区委員会
松村友昭都議事務所
日本共産党練馬区議団

赤ちゃんの遺族の声にこたえて
 区内に住み妊娠30週のAさん。保育園に行く途中突然破水し、救急車を呼んでもらいました。しかし、受け入れ先が約1時間も見つからず、やっと荒川区に見つかりましたが、その病院に行くのにさらに時間がかかり、何とか母親は一命をとりとめたものの、おなかの赤ちゃんは助かりませんでした。

 「霊安室で赤ちゃんは可愛い服を着せてもらい今にも動き出しそうな感じでした。もっと早く医療を受けられれば死なずに済んだはずなのにと思うと、いたたまれません。今後同じようなことが起こらないよう施設を整備してほしい」と痛切な訴えでした。

 専門家の話では、妊娠30週目なら十分助かる命だったといいます。医療過疎の練馬でなかったら赤ちゃんも助かったのではないでしょうか。それは産科だけの問題ではありません。これまでも重症救急患者の遺族から「もっと近くに病院があったら‥‥」という声がきかれました。戦後の区創立時期から続く医療過疎で、区民の命を守ることができない状況にある練馬の一端を示したものと言わなければなりません。現状では同じことが、いつ起きても不思議ではない状況にあると言えます。

 赤ちゃんを犠牲にしたことは大きな重みがあり、練馬区の病床過疎解消と救急、周産期医療はじめ各種の医療機能拡充に正面から取り組むことが求められています。

当面する要望項目

 練馬区の医療過疎解消・医療機能拡充のためには、現在の基準病床数制度のもとでも必要な病床数を必要な時に増やせるようにすることが不可欠、緊急の問題であることは、この間の区民の強い願いと区の取り組みからも明確です。区が、医療圏に関して直接の権限をもつ東京都が練馬区の病床格差是正に正面から取り組むよう、強く求めることを要望します。

1.練馬区を独立した医療圏にさせる~当面、23区平均病床数との差を半分に
-2018年度の次期保健医療計画改定までに900床増やす-

 日本共産党練馬地区委員会は、東京都に下記の論点で西北医療圏を分割し、練馬区を独立医療圏として基準病床数も決めることを求めましたが、区の賛同を得て共同できたら幸いと思います。

●医療圏内の病床偏在是正も都府県の責任 正面から取り組む姿勢を

 医療圏の決め方と病床数の配分は、あげて都の責任であり、国や区ではできません。
 ところが都は、病床数の偏在や矛盾で医療圏の見直しを求めても、制度発足以来一回も見直ししたことがありません。練馬の病床過疎については、あらゆる形の区民からの要望を無視し、区議会の意見書すら検討しようとしません。

 特徴的なことは、都は練馬の病床数問題で質問しても、西北医療圏の基準病床数の話に逃げ、まともな答弁をしないことです。
 国の基準病床数は、その目的の中で「病床の整備について・・・病床の地域的偏在を是正し、全国的に一定水準以上の医療を確保」すると明記しています。このことは、医療段階のことであるだけでなく、当然医療圏内の偏在についても求められることであり、厚労省は「都道府県の責任である」と明言しています。

 都は、医療圏見直しをしない理由に「医療圏の諸条件が変わっていないから」と言いますが、それは西北医療圏の設定の仕方が初めから間違っていたということであり、長期間、練馬の病床偏在の是正の責任を放棄してきたことを示すだけです。そのことは別紙、「参考」文書「練馬の医療状況と東京都の対応」のなかで、事実をもって示されています。

 都は、過ちを正し、練馬の病床格差を早急に解決し、責任を果たすため正面から真剣な努力をすべきです。

●病床偏在是正には医療圏分割しかない 練馬「医療圏」は可能-各県の経験から

 練馬の病床格差は大きく、現在の基準病床数と現存病床数との差を見ても明白なように西北医療圏内での是正は不可能です。是正するには、基準病床数の大幅増か現医療圏の分割しかありません。

 国に基準病床数を大幅に増やさせることは、すぐには望めません。従って、都の権限でできる現医療圏の分割を何としても行い、病床数過少の医療圏をつくらなければなりません。23区の中でも、その新医療圏に練馬区が入ることは(豊島区も入れることもありうるが)、病床数が23区平均の1/3という異常な状況、人口は小さな市の2つ分、そして医療過疎の実態などみれば、きわめて適切な措置といえるでしょう。都は「練馬医療圏」実現を決断すべきです。新医療圏の基準病床数は当然、できるだけ短期間に医療過疎を是正するにふさわしいものにする必要があります。決断し、国など関係方面に手立てをつくすよう求めます。

 厚労省は「医療圏内で病床偏在が続いているところには、医療圏見直しを指摘しており、一つの自治体で一医療圏にしているところもある」と述べています。事実、医療圏内の病床偏在是正のため、栃木県は一つの医療圏を2分割し、愛知県でも2分割し、それぞれ病床過少医療圏にしています。宇都宮などは1自治体1医療圏です。

 都は、法令的にも事実上も可能な練馬区の独立医療圏移行を早急に実現するよう、重ねて強調します。
2.医療機関と機能の充実 ―医療機関―
(1)「500床」新病院は誰もが安心して入院できる公立、準公立。3次なみ救急もおこなう「総合病院」に -区は22年度建設着工を繰り上げる-

 現在練馬には20床以上の病院が三つありますが、実際に高度の医療を行っているのは順天堂病院だけと言えます。これら若干の病院は多くの患者がありますが、区全体としては、救急は病院不足等で患者の61%は区外に、入院患者も69%が区外に行っており、昨年の区民アンケートで示されたように、依然、病床・病院増の願いは強いものがあります。

 練馬区では過疎の特徴の一つとして、大都市なみの人口と面積なのに公立や、例えば日赤病院など準公立の病院がありません。こうした点も考え、新病院は差額ベッドの少ない公立、準公立で、三次なみの救急など高度な医療も行う「総合病院」とするよう要望します。

 財源では、練馬の病床過疎の経過や新病院が公立、準公立病院という点から東京都の大きな補助を求めます。
 都は現在、公立病院整備に対する都の補助について、「多摩地区は公的医療機関が少なかったという歴史的経緯と財政状況にかんがみ」と市町村が設置する病院の運営費に補助を行っていますが、23区立では補助はありません。しかし、練馬区の場合は、区立、公立病院がない、歴史的に独立した当初から病院過疎で今でも病床数は23区平均の1/3という、多摩地域と同様な状況にあると言っても過言ではありません。区は確固として、公立、準公立の新病院整備で都の補助を求めるべきです。

 また、三次なみの救急にするため、基準病床数制度の特例を活用して、必要な病床増ができるようにする。また、病院が空白に近く、高齢者の率も高い区の西北地域につくることは切実な問題であり、練馬区全体の医療水準を高めることにもなります。

(2)人口増に対応、国の特例の精神生かし 「格差是正の臨時増床」で400床を

 練馬区の1991~2012年の人口の約10万人増は、人口10万人あたり病床数を後退させ、救急患者の増、特に区外搬送を10%も急増させるなど区民の苦難を増大させ、それが今日まで続いています。

 国の制度では「急激な人口増」の場合は、基準病床数超過地域でも増床することができると、大きな人口増の時の救済措置を求めています。練馬の1万人増は約20年間のことであり、国の言う「急激な人口増」ではありませんが、都が何ら手を打たず、20年で増えた病床数が142では、実態の実情は2012年時点での「急激な増加」となんら変わりありません。

 人口10万人といえば中規模の都市が生まれる規模であり、区の面積も山の手線内側と同程度という広さ。そこで異常な病床過疎と他区との大きな医療格差の実態をみれば、今こそ国の特例の救済の精神を生かすべきです。

 具体的には都に対し、基準病床数の枠外で23区の10万人あたりの平均病床数828の1/2、約400床の増床を厚労大臣の合意も得て実行するよう強く求めるよう要望します。

(3)中小病院の増設・拡充

①当面、総合病院を区西南部に増設する -二次救急医療も合わせて-

 練馬の病院数は17。人口10万人あたり2.4で同じ医療圏の豊島、北、板橋と比べ半分以下です。特に、患者が順天堂など高度の医療を必要としない場合には、地理的にも交通の便でも気軽に行けるように中小の病院を全区的に医療・介護の一環としても、有床診療所と合わせて支援、拡充することが必要です。

 その一つとして、区の西北地域についで病院が少ない区の西南部に200床程度の病院増設を提案します。こうして有床、一般診療所や開業医も支援し連携のよい地域医療をつくることが必要です。

②特定機能拡充と結び中小の新設・拡充を

 練馬区では救急、周産期・産婦人科、小児科、循環器疾患やがん、放射線など多くの医療分野での人口10万人あたりの専門医師数が全国あるいは23区平均の50%以下となっています。こうした状況を急いで改善することが必要です。

 基準病床数制度では、特定の病床等に係わる特例として「更なる整備が必要となる一定の病床については、病床過剰地域であっても、都道府県は厚生労働大臣の同意を得た数を基準病床数に加えて、病院増設・増床を行うことができる」と明記し「がん又は循環器疾患の専門病床、小児疾患専門病床、周産期疾患や救急医療に係る病床」など13の具体的項目をあげています。

 これらを活用して中小病院の増設、拡充を積極的におこなうよう要望します。

(4)医療機能拡充も考え、都・区一体で 他区の公的病院の誘致、分院を進める

 医療圏策定以降の状況から、都の現在のやり方では練馬の医療過疎が解決できないと、はっきりした以上、区は決意を固め、東京都に申し入れて一体となり、他の区からの公的病院の誘致、分院など進めること、また、医療機能の分化、連携を図ることを要望します。

(5)有床診療所を各地に広げ活用する

 有料診療所は、緩和ケア実施などすぐれた例が全国各地に生まれていますが、練馬区でも、区全体の東京都指定の救急告示医療機関10ヶ所のうち、2箇所は有床診療所であり、うち1ヶ所は都指定の二次救急医療機関(全区で7ヶ所)として、いずれも都の「休日・全夜間診療事業」の委託を受けるなど、地域医療を支える重要な役割を果たしています。

 桝添都知事は、有床診療所の役割については質問に対し「高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活できるようにするためには、住まいや医療、介護、生活支援サービスなどが切れ目なく提供できる地域が連携した地域包括ケアシステムを構築していくことが必要」「このシステムの中で有床診療所は、在宅医療の提供、急変時の在宅患者受け入れ、介護サービス提供など多くの役割を担うものである」と答弁しています。

 地域包括システムの構築が強く求められている今日、有床診療所をその要(かなめ)として 行政にきっちり位置付け、再編、復活など役割にふさわしい活用のため、方針、計画も明確にして推進すべきです。区は、東京都にこれらのことの実施を申し入れ、区としても必要な方針、計画を立てて、各地域に広げ、活用するよう要望します。

 有床診療所の病床は、病床数過剰の医療圏でも、診療所における在宅医療、小児医療、産科の病床設置は、国の基準を満たす限り、増床可能です。こうした条件も生かし、有床診療所を区内の各地域に広げれば、地域包括システムの構築とともに区の病床数も増え、練馬では、過疎解消への一つのカギにもなりうるのではないでしょうか。

 大きな問題は、重要な役割をはたす有床診療所であるのに、運営面をみると、入院診療単価があまりにも低いため、今の制度では運営が非常に困難な状態にあるのが実態だということです。現行の施設整備費補助や運営費補助だけでは極めて厳しい状況に立たされています。

-都に対し思い切った運営支援を求める-

 区は東京都に対し、有床診療所を含め、医療機関の運営に係る経費は診療報酬で賄うことが基本というだけでなく、真に、今後ますます地域医療や介護を支える有床診療所の役割の重要性を認識するなら、その活用促進に向け、都有地による医療インフラの活用などの支援をするよう強く求めることを要望します。
3.医療機関と機能の拡充 -機能の拡充-
 医療機能拡充の課題については、今年の1定、2定の一般質問で緊急の周産期医療、小児科医療、災害医療、訪問診療を取り上げ、答弁もいただいていますので、必要な問題が出ましたら再度質問等で要望します。今度の要望書では医療機能拡充でもっとも緊急で大事な課題となっている救急医療について要望します。

◆救急医療の早急な拡充を
 練馬では、都の救急告示医療機関が7つと圧倒的に不足しているため、搬送先は区内の医療機関が約42%、区外の医療機関が約58%となっています。その実態の中では、唯一の拠点病院である順天堂練馬病院の病床率は、全都平均の75.4%を大きく上回る90.5%と非常に高く、一刻を争う救急患者も遠い区外に運ばれているという状況にあります。

 もう一つ重視すべきは、人口71万人を越す練馬で2013年の救急搬送の中で重症以上の患者が約10%を占め、都の平均より高いこと、それが増加傾向にあることです。にもかかわらず、そういう患者を受け入れられるのは順天堂練馬病院1ヶ所だけという、まさに、のっぴきならない緊急の状況にあります。

 区が、さらに大きな特別の力を入れるとともに、病床数偏在是正に責任を負う東京都の支援も含め、練馬の救急医療の量質ともの拡充を果たすよう強く要望します。

 その中で練馬区でこそ、病床過剰地域で増床できる法の特例を100%活用して解決を図るべきです。具体的には、

(1)都に対し、練馬に救命救急センターを誘致するよう要望する

 前記のような救急医療が緊急の状況にあり、人口が71万もあり面積も山の手線内に匹敵する練馬にこそ都の救命救急センターが必要です。それは地理的にみても、都の西部で三多摩地域とも接するなど適切であると思われます。もちろん、「頼りは順天堂だけ」の練馬から脱却し、「救急の大きな中核」として練馬全体の医療水準向上につながるものです。

(2)中小の病院に総合診療ができる医師を

 現在、初期救急など病院の一部では、医師の中には、専門の科はできるが各種の病状に対し総合診療ができない者いるため、救急患者の受け入れを断る例もあります。そのため救急車が受け入れ先を決めるのに時間がかかり、結局、他の区に行かざるを得なくなるといわれています。どんな科の症状についても処置の判断ができる医師を増やし、こうした病院や新設病院での救急医療実施を援助することが必要です。

(3)なかでも夜間対応の当直医師の確保を

 特に夜間は、当直できる医師がいないと非常勤の医師が対応せざるを得ませんが、救急医療では総合診療ができないといけないので体制がとれないことが少なくないといわれます。救急医療拡充を求める声が多い理由の一つになっています。

(4)救急医療への財政的支援を

 「救急医療は赤字」-救急医療を拡充するため、こうした状況を抜本的に変えることが必要です。そのため東京都に対し求めること

 ①二次救急補助金改定で中小病院が減収に措置を止めること
 ②初期救急にも補助金を
 ③国に対し救急医療の財政改善を求めること

(5)救急医療実施の医療機関の拡充

 ◆中規模で、2次救急ができる病院を新たに整備する
 ◆光が丘、練馬総合病院や他の4病院への支援を強め二次救急医療を拡充する
 ◆初期救急の病院への支援も強め可能な施設で2次救急実施を検討する

以上